76歳、独身、結婚歴は一度もなし。
同居していた親友に先立たれ、一人ぼっちになり途方に暮れる桐子。
僅かな年金と清掃のパートで日々を細々と暮らす中で、刑務所で”快適”に過ごす高齢者達の姿をテレビで見かける。
他の人に迷惑はかけられない。ちゃんと刑務所に入ってそこで無事死ねるように、と自分の始末を自分一人でつける決心をする。
刑務所に入れば、住む場所はもちろん、食事ももらえ風呂にも入れ、その上病気になったら介護までしてもらえるなんて…。今まで考えたこともなかった。
刑務所に入るための犯罪が様々あって、しかも意外と刑務所に長くは居られないものなんだな、とちょっと驚いた。
「私は失うものは何もない」
そうきっぱり言い切る桐子。
けれど残りの人生を生きていく上で、周囲の人の信用を全て失うことになるのはどうかな。自尊心を失うのもね。
「老人の死というのは結局、これまでの人生の答え合わせ」
桐子の日々の暮らしを覗いてみて、老いて生きていくことの難しさに胸苦しくなった。
桐子はちょぅど私の母親と同い年(干支も申)。
母親の老後もだけれど、自分自身の未来の生活に不安を感じる。
居場所、収入、健康、役割、話し相手、生きがい…考えるべきことは尽きない。
自分の人生の答え合わせを出来る限り満足させるためには…正解はなかなか出ないけれど、これから老後を迎えるにあたり、とても参考になった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
原田ひ香
- 感想投稿日 : 2021年3月20日
- 読了日 : 2021年3月20日
- 本棚登録日 : 2021年3月17日
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