千葉大学名誉教授の秋元英一(経済学)が1999年に講談社選書メチエから出版した書籍の復刊、文庫化。
【構成】
第1章 暗黒の木曜日
1 マーケットが崩落した日
2 マイホーム、映画、T型フォード
3 大恐慌はなぜ起きたか
4 フーヴァーの失敗
第2章 市民たちの大恐慌
1 失業者たちの長い列
2 自宅を追い出された人びと
3 コーンベルトの叛乱
4 女性たちの苦難
第3章 市場崩壊のメカニズム
1 銀行倒産6000行の衝撃
2 リフレーション論の系譜
3 政府は銀行をどう改革したか
4 金本位制停止からドルの切り下げまで
第4章 ニューディールの景気政策
1 ローズヴェルトが大統領に就任したとき
2 農業は復権を、労働者には賃金を
3 失業者救済計画
4 消費者意識の芽生え
第5章 ケインズ理論への道
1 ケインズが見た世界大恐慌
2 均衡財政から積極財政へ
3 昭和恐慌と高橋財政
2008年秋以降の金融危機において、「100年に1度」という形容詞がそこかしこについてまわる。しかしながら、そういう形容詞を使う人の中に著者がプロローグで述べるように、80年前に起こった「世界大恐慌」についての詳細を知る人がどれぐらいいるだろうか?本書はタイトルと構成を見ればわかるように、その「世界大恐慌」を「暗黒の木曜日」以前から1930年代後半の「ニューディール」収束時期に至るまで概説している。
本書は、政治過程というよりは経済史としての「大恐慌」の数少ない実証研究である。特に第3章の後半から第4章にかけて、アメリカ政府と連邦準備銀行による金融政策、為替政策について繰り広げられる議論は、国際経済について何ら知識を持ち合わせていない私のような者にはついていくのがかなりしんどいものがあった。
しかし、決して小難しい文章が並んでいるわけではなく、よくよく初心者にも配慮されたわかりやすい表現がとられている。折に触れてフーヴァーからローズヴェルトへの政策転換がまとめられているので、読み進むにつれて全体が見えてくるようになっている。
こんな時勢だからこそ、本書のような実証研究が登場することの価値はある。マス・メディアの根拠不明の活字に踊らされる前に、まずは地に足の着いた史実に基づいて判断する姿勢をもちたいものである。
ただ、やはり一読して自分自身の理解不足を思い知らされたので、また折りを見て読み返してみたい。
- 感想投稿日 : 2011年6月20日
- 読了日 : 2009年3月24日
- 本棚登録日 : 2009年12月30日
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