ユング心理学と仏教

著者 :
  • 岩波書店 (1995年10月20日発売)
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感想というか、感じたことの羅列になってしまう。というのは、本書は4回程の講義を文章化したものであり、しかもその講義は日本人のユング心理学者がアメリカで仏教とユング心理学について、ユング心理学の専門家に対して、本人が日本語で書いた原稿を英語の専門家に英語に翻訳してもらったものを英語で講義するというまわりくどさをもっているためである。内容は編集の段階で相当の省略・簡略化が行われているだろうから当然体系的でもないし、まして一般的というわけでもない。しかし、本書のあとがきにもあるように、本書の内容が講義され、そして出版されたのが1995年の阪神淡路大震災と近接して前後しており、今(2011年5月)のタイミングで偶然手に取り読んだことに、個人的にはとても感慨深いものがあった。

それにしても華厳経は、単なる仏教思想を超えているように思われてならない。さっぱり理解できないが、なぜか宇宙的だと感じてしまう。大日如来は中心にいて、そして、一言も発しないというはなしが、もっとも印象に残っている。

日本人がとるユング心理学に対するアプローチと欧米人がとる仏教(特に禅)に対するアプローチをビジネスに取りいれたら、ほとんどU理論じゃないかと思った。U理論の著者が日本に興味があることも頷ける。

考えてみれば、仏教はそもそも極東の日本からみれば西洋との中間点に起源をもつのだから、とりたてて東洋的ということを強調することもないのではと思わないでもない。

西洋と東洋の中間といえば、本書において井筒俊彦の仏教に関する著書からの引用がいくつかあったが、言うまでもなく氏はイスラムに関する研究も有名だ。

リーマンショック以降、従来の資本主義の限界が顕になってきていると同時にイスラム文化圏の動きの活発化が連動しているように思われてならない。仏教とイスラム教に対するアプローチが重要になってくるのかもしれない。

そういった意味で、今後、井筒俊彦氏が脚光を浴び、再評価されるのではないか?と思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2011年5月9日
読了日 : 2011年5月9日
本棚登録日 : 2011年4月24日

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