なんだろう、マリアに関する物語が嘘っぽくて感情移入できなかった。
いくらマリアが献身的に尽くしたとはいえ、女将さんが死ぬ間際にマリアに会いたがるとはやっぱりとても思えない、とか、尽くすならマリアじゃなくて与羽でしょう、とか。
それに対して若者2人(紫紋と丸弧)はいかにも若者の挫折と希望ですがすがしかった。

2021年10月16日

読書状況 読み終わった [2021年10月16日]
カテゴリ 正統派

久しぶりに小説らしい小説。
主要な登場人物は柔らかく、静かで、大きな心の動きはないのだが、周囲の環境だけが大きく変動していく。小説全体の雰囲気からすると、終わりは衝撃的だ。
タイトルはちょっと気に入らない。原作のタイトルを日本語にしたら「調律師」にしかならないから、何かつけたかったんだろうけど、「恋」って…ださい。
まああえて「恋」だとしたら、相手は誰かな、たぶんキンミョーだろうなあと思いながら読んでいて、最後の方でそれらしい雰囲気になるんだけど、でも結局、恋の相手はビルマそのものだったんだと思う。

2021年8月12日

読書状況 読み終わった [2021年8月11日]
カテゴリ 正統派

情緒的なことばや表現が多いんだけど、全体としてはベタベタせず、乾いた感じの文章。
ピアノコンクールとしては疑問に思う設定もあるんだけど、若い人の成長物語なのだから、まあそれもありかと。
とはいえ、成長物語としては分散してしまった感じだし、ピアノコンクールの修羅場を描くには淡々としすぎてしまった感じがする。
キャラクターもつっこみが足りない。こんなに個性的な人がいるのに、天才なのに嫌味じゃなく、はめをはずさないマサルが一番魅力的に感じてしまう。優勝してよかった。

2021年6月17日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2021年6月17日]
カテゴリ 正統派

先日読んだ「お葬式の言葉と風習」の姉妹版といった感じ。
日本は火葬率99.9%とのことだが、かつては土葬も、野焼き火葬も、風葬(遺棄葬)もあったとの記述に驚く。
詳細な野焼き火葬の描写は凄絶である。土葬した遺体を掘り出して洗骨した与論島、孫が「こわくなかった?」と聞かれてうなずいた後にさめざめと泣いた、という記述には鳥肌が立った。コンクリートとガラスの中で暮らし、出来上がった葬儀しか知らない現代の都会人には、こうした生々しい葬儀は耐えられない。
現代の火葬では、喪主が点火のボタンを押す時に「これを押すともう引き返せない」と感じるが、実は土葬でもそうだ。祖父の葬儀で、棺を穴に入れ、促されてその上に土を入れる瞬間、「これを入れるともう引き返せない」と感じた。土葬の記述で、その感覚を思い出したのは、私にとっては1つの収穫だった。
日本で土葬が禁止されているというのは誤解である。土葬を望む人に応える「土葬の会」というグループがあるそうだ。私は亡くなった人を当たり前に土に埋めていた日本も知っているし、世の中にあらがうように土葬を選ぼうとする人たちが現れた日本も知っている。歴史の狭間にいる、と言うのは大げさだろうか。

2021年6月15日

読書状況 読み終わった [2021年6月14日]
カテゴリ まじめに学ぶ

1篇目は殺伐、2篇目は不可思議、3篇目は怒り。
おかしなことに、美姫はどこかにいそうなのに、杉村三郎や竹中家を含む周りの人たちはいそうにない気がしてしまう。それが、今の世の中なのだろう。
杉村三郎シリーズは好きな作品。三郎のイメージが変わってきたと思う。三郎が年を取ったともいえるし、探偵業ですれてきたともいえるし。たぶん、自然な変化なのだろう。
次作も期待。

2021年5月5日

読書状況 読み終わった [2021年5月4日]
カテゴリ のんびりと

大学生の頃、田舎の祖父が亡くなったが、当時そこはまだ土葬だった。その時に経験したことがいくつか出てきて、ああ、あれはこういう意味だったのか、そうだ、これもやった…と興味深く読んだ。
お葬式というのは保守的で、儀式化されてその通りにやりさえすればいいので、なかなか変わらないのだろうと思うが、それでも同じ意味のことにバリエーションがある。やはり地域や時代によって変化するのだ。
ここ数年「葬儀は家族ですませました」と言ってお葬式に呼ばれないことが増えてきた。都会という事情もあると思うが、葬儀は負担に感じるものになってきているのかもしれない。葬儀が大きく変化していると思う。
自宅に村中の人が集まり、僧侶が5人呼ばれ、家族は帷子を着て、男手が座棺を担いで墓地までぞろぞろと歩いて行った…あの祖父の葬儀を経験できたのは本当に貴重だったのだと思う。
切り絵が美しいのだが、あるページに、私が祖父の葬儀で実際にやった役回りを描いた絵があって、変な話だが、なんだか嬉しかった。

2021年4月7日

読書状況 読み終わった [2021年4月5日]
カテゴリ まじめに学ぶ

ビブリアの続編出たのねと先日読んだのは、なんと続編の2冊目だったことを知り、穴埋めで読んだ。
これまでのビブリアが危険な話が多かったので、ゆったりした話で落ち着く。第2話が意外性があっておもしろかった。
なんとなく、栞子さんと大輔くんだと落ち着くなあ。扉子ちゃんはこまっしゃくれていて、この巻ではあんまり可愛くない。

2021年3月9日

読書状況 読み終わった [2021年3月8日]
カテゴリ のんびりと

21世紀という時代に取り残された北海道のはずれ、感情が麻痺し、身体だけになってしまったような女性たち。舞台になった釧路には何度か行ったことがあるが、そこで感じた冷たくて湿っていて重い空気を思い出した。
おもしろいとは思うけど、あまり好きだとは思えない小説。

2021年3月7日

読書状況 読み終わった [2021年3月7日]
カテゴリ のんびりと

以前、故・千野栄一先生の言語学の講演を聴いたとき、世界にわかっていない言語はほとんどなくなってきた、残っているのはニューギニアだ、とおっしゃっていた。この本で調査対象となっているタヤップはまさにそうした言語だ。
しかし言語に関する記述はさほど多くなく、主に言語調査をする過程での筆者と村の人々との「あれこれ」が描かれている。(言語に関する研究は、別に博士論文として完成されている)
これが実におもしろかった。ところどころに、村の人々との別れがたい感情のつながり(いわゆる涙腺崩壊的な)が垣間見えるものの、おおむね非常に冷静で客観的な研究者の目でできごとを(自分自身も含めて)詳細に描いている。読んでいるうちに、だんだん村の様子を自分で見てきたような気持ちにさえなった。
言語が消えるのは残念だ。しかし残念だというのは、当事者である村の人に対する傲慢ではないのか。言語が消えれば、泣いても悔やんでも取り返せないが、当事者は泣いてもいないし悔やんでもいない。
パプアニューギニアの文化が考えるように、これは「自分たちの外にある何か大きな力によって動かされた」結果なのだ。

2020年10月12日

読書状況 読み終わった [2020年10月10日]
カテゴリ まじめに学ぶ

「リターンズ」が出ているということで読んでみた。
認知についての話が多く、言語に興味がある私としては、ちょっとわかりにくかった。
しかし、最初に出てきた絶対音感の話は突出しておもしろかった。言語音を絶対音感と相対音感で理解するのは、音声学と音韻論に相当するように思う。
もしこの点を掘り下げた続編が出たら、ぜひ読んでみたい。

2020年9月23日

読書状況 読み終わった [2020年9月23日]
カテゴリ まじめに学ぶ

新聞の広告を見て、ぜひ読んでみたかった。期待通り、すごくおもしろかった。
ASDや発達障害に詳しくないので、わかりにくいところもあったけど、言語習得に関しては思い当たることとか、なるほどと思うことが多かった。
外国語習得に関して言えば、教科書で習う外国語は、ASDの子がテレビやビデオで共通語を覚えるようなものだ。俗語やいわゆる「こなれた言い回し」は、その言葉が使われる場面で覚えていかないと、ヘタに使って失敗する可能性があるが、反対に言えば、そういう言い回しを自然に使えるということは、その言語コミュニティで自然言語として獲得したという証にもなる。教科書では俗語やこなれた言い回しは覚えられないのである。
言語というのは、どこまでいっても社会やほかの人とのかかわりの中に存在するものだ。外国語をなりわいとする身としては、教科書で習った外国語をどうやって社会とかかわりのあるものにするか、教科書で習った外国語でどうやって意図理解・意図確認ができるようになるか、これがとても重要なのである。

2020年8月18日

読書状況 読み終わった [2020年8月18日]
カテゴリ まじめに学ぶ

ビブリアは気に入って欠かさず読んでいたので、シリーズ再始動という新聞広告を見て、すぐに買いに行った。
巻が進むごとに謎が深まる前シリーズと比べると、軽いジャブのような感じで、さらっと読了。
横溝正史はほとんど読んだことがない。死体、旧家、じめじめとかび臭いイメージがどうも好きになれないので。でもそのイメージを持ってるだけで、本作は楽しめます。
ところで、扉子ちゃんを栞子さんの分身と位置づければ、大輔くんに当たる相棒が必要。圭ちゃんがそうなるのかな…。とすると、恋愛要素はなしですね。

2020年7月26日

読書状況 読み終わった [2020年7月26日]
カテゴリ のんびりと

うーん。台湾新幹線を絡める必要があったのか、疑問。台湾と日本とのつながりを強調したかったのかもしれないけど、それは人と人のつながりで示せばよくて、ほかの仕事であっても全然よかったんじゃないかな。
台湾新幹線に惑わされて人間関係とか、登場人物の魅力とかが浮かび上がってこない気がした。特に前半は人物が込み入りすぎてわかりにくかったし。
後半になってやっと見えてきたという感じ。嘘っぽい主人公2人のつながりよりも、勝一郎と中野のつながりに心を惹かれて、中野の最後の言葉は、心に迫るものがあった。私も年とったかな。

2020年7月24日

読書状況 読み終わった [2020年7月24日]
カテゴリ のんびりと

相当なクラシックおたくでないとわからない情報が満載。私は少しはクラシックを聴くけど、ほとんどちんぷんかんぷんだった。
小説自体は可もなく不可もなし。最初の「ストラディヴァリウス」が一番おもしろかった。「ワグネリアン」は2本目の落ちが見え見え。「レゾナンス」は学生時代の処女作だそうだが、これはいただけなかった。ミステリーに進んだのは正解だと思う。
内容とは別だけど、本の装丁がいい。カバーを取ると、表紙が作中に出てくるある作品の楽譜になっている。この装丁に惹かれて読む気になった。これは、電子書籍では味わえない楽しみだ。

2020年5月3日

読書状況 読み終わった [2020年5月2日]
カテゴリ のんびりと

杉村三郎の中編4本。「ペテロ」なんかに比べると、ちょっと物足りなかった。
たとえば、井上喬美。あんなことをしたいきさつはわかったけど、そうせざるを得なかった理由、何がそうさせてしまったのかの闇みたいなものがあまり見えてこない。彼女はある意味でこの話の主人公なので、長編だったら通奏低音のように彼女の闇が描かれたんじゃないかなあと勝手に空想する。宮部みゆきは長編のほうがいい。
いずれにしても、杉村三郎は好きなキャラクターだ。事件に対する感情が一切なく、すがすがしいほどそれが徹底している。そういう意味では蛎殻の坊ちゃんもそうだ。2人でコンビを組んでくれないかなあ。

2020年4月30日

読書状況 読み終わった [2020年4月29日]
カテゴリ のんびりと

4つの部分に分かれている。「仕事の心得」はノウハウ的な内容で、短いこともあって突っ込みが不足しているように思う。もうちょっと読みたいところで終わってしまう。「聞くこと」、ラジオインタビューの手法についての自己評価の部分はさほどおもしろくないが、インタビュー自体はすごくおもしろい。野町和嘉の写真をぜひ見てみたくなった。「書くこと」がやはり真骨頂だ。最相葉月の著書は何冊か読んでいて、好きなライターなのだが、これほどのめりこんでいかなければ書けないものなのか。「読むこと」、何冊かは読んでみたいと思った。自分の好きなジャンルがあって、興味を引かれたものとそうでないものがある。
いろいろなところに書いた短文を集めた本はときどきあるが、おもしろいものとそうでないものが混在していることが多い。これもそういう印象。

2020年4月17日

読書状況 読み終わった [2020年4月17日]
カテゴリ まじめに学ぶ

やけにハイテンションな語り口調はご愛敬として。
こんなにもたくさんの「計算道具」が日本に存在していたとは思わなかった。私はもう計算尺を使わなかった世代。この本を読んで使ってみたくなったが、もう製造されていないようだ。
やはり計算道具の王者は算盤だと思う。この道具は手先の器用な日本人に合っていたんだろう。OL時代、経理の女性社員が算盤の段持ちで、たいていの計算は暗算でやり、確認のために算盤で計算していた。
カシオミニはそんな達人(たち)をぶっ飛ばしたわけだ。これも、すごい。

2020年4月9日

読書状況 読み終わった [2020年4月9日]
カテゴリ のんびりと

出版からだいぶたったけど、やっと読めた。
私はお仕事小説が好きなので、前作の「なあなあ日常」を楽しく読んだ。今作も楽しかったけど、神去村の人々のことがメインで、お仕事については期待したほどではなかったかな。
今作で印象に残ったのは20年前のことについて話すヨキ。山は、生きている人とあちらの世界の境界にある、というのが皮膚からわかってくるようなエピソードだった。ある意味で、この部分だけで十分お仕事小説になっていると言えるかもしれない。

2020年1月10日

読書状況 読み終わった [2020年1月10日]
カテゴリ のんびりと

幸せが約束されている童話という感じがした。
優しくて真剣だけど、実在感がない。
嫌いな小説ではないけど、どうにもならない現実が見えなくて物足りなかった。

2019年12月28日

読書状況 読み終わった [2019年12月28日]
カテゴリ のんびりと

こういうつきつめていく文章、好きだ。ただ、つきつめているのが生と死なので、読んでいて苦しい。苦しいけど、読むのをやめられない。そういう本。
たいていの部分は共感できるし、私にはない感覚を疑似体験しておもしろかったけど、昔先生のエピソードだけはいいと思えなかった。先生の中ではちゃんと理屈があって言っていることだと思うけど、その理屈の流れに乗っていない人にはさっぱりわからない言葉。こういう物言いは嫌いだ。筆者は先生の理屈の流れに乗っているんだろうけど、読者は乗ってない。たぶん、それをわかってて、あえて先生の言葉をそのまま書いたのだとは思う。でも、私は乗ってないのでさっぱりわからなかったし、おもしろくありませんでした。

2019年7月8日

読書状況 読み終わった [2019年7月7日]
カテゴリ 正統派

経済についてまだらな知識しかないので、読んでみた。株や投資の知識の第一歩がすっきりわかって満足。
確かに、経済は学校で勉強するけど、投資のことを勉強する機会はない。大人になってから知りたいと思っても、入門書ですら「株をやろうと思ってるなら、ある程度はわかってるよね」というスタンスが多くて不親切だと思う。
「自分の収入の範囲で暮らす」という当たり前のことといっしょにウォーレン・バフェットが紹介されていたりして、子どもあつかいしていないところも◎。

2019年6月21日

読書状況 読み終わった [2019年6月21日]
カテゴリ まじめに学ぶ

成功する企業家には才能と運と時代があった。高度成長期の日本で成功した企業家もきっとそうだったのだろう。
一番面白かったのは、終章の最後に出ていたメイカーズと山寨王の話。中国の成長物語はそろそろ終わろうとしているように思える。これからは運と時代ではなく、自分の才能だけで戦っていかなければならない。そういう人たちの今後は、とてもおもしろそうだ。

2019年6月4日

読書状況 読み終わった [2019年6月4日]
カテゴリ 中国を学ぶ

おもしろかった。というより、勉強になった。誤訳やまずい翻訳をしてしまうときは、たいていもう一歩の踏み込みが足りない、文化の知識が足りないというのは中国語訳も同じ。ただ、自分が訳してると、これ、変じゃない?と立ち止まれないのも事実。感性なのか、経験なのか。
それから、英語翻訳では参考書が豊富なのはうらやましい。The London EncyclopaediaとかWatching the Englishとか、中国語でもこんな本があったらなあと思う。

2019年4月30日

読書状況 読み終わった [2019年4月30日]
カテゴリ 仕事参考書

私のようなはしくれの通訳でも「あるある」と思う箇所がけっこうあって、おもしろかった。
とはいえ、通訳をやっていない人、通訳に興味がない人にとっておもしろい本なのかな。たいへんだなとは思っても、共感することはできないように思う。かなり読者を選ぶ本。

2019年3月16日

読書状況 読み終わった [2019年3月16日]
カテゴリ 仕事参考書
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