「本をつくる」という仕事 (単行本)

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本棚登録 : 534
レビュー : 39
著者 :
crick114さん  未設定  読み終わった 

本は決して、作者が文字や絵を書いて、それを印刷すれば出来上がりというわけではない。内容を誤りのないものにするためには校閲の作業が必要だし、印刷された「紙の束」を本にするには製本や装丁が要る。そもそも、文字の形(フォント)や本の紙にも色々な種類があって、それはそれぞれ本のために誰かが作ったものだ。
本は、特に紙の本は、そんな多くのプロフェッショナルたちの仕事で成り立っている。これはそんな人々に焦点を当てた本だ。

自分は電子書籍はあまり得意ではなくて、コレクション的な意味も含めて紙の本が好きなのだけど、その割に、本がどのように作られているかということにはあまり目を向けていなかったような気がする。だから、本が絶版になったというような話を聞くと、「データはそこにあるのだから、絶版なんて言わずに刷ればいいじゃないか」と思っていた。文字通り、刷ればそれで本ができると漠然と思っていたのだ。でも、違う。私たちが欲しいのは本であって、紙の束ではない。それが本になるには、また多くの手をかける必要がある。
売れない本は絶版になってしまう。残念なことでもあるけれど、それは、本というものが多くのプロフェッショナルの仕事を経て生まれてくることの裏返しなのだと分かった。

様々な仕事が本書では取り上げられているけれど、自分が一番好きなのは新潮社の校閲部を紹介している章。ある作家さんが、新潮社の校閲はすごい、と言っているのを見たことがあって、興味があった。どちらかというと「古き良き時代」のことについて多く語られてはいるけど、総じて校閲という仕事の意義や使命について熱く語られている。校閲は出版社の良心だ、と。校閲が、単に誤字脱字のような明らかな誤りだけでなく、ストーリー構成の矛盾点までも指摘する仕事だとは知らなかったので、驚いた。

この本を読んだ後に、古本屋で昭和10年代とかの本を目にする機会があった。当然活版印刷で、装丁も豪華というわけではないけれどどれもとてもこだわりを感じられる作りだった。自分がその時見たのは価格にして数百円だったけど、それでもだいぶ興奮したので、『ビブリア古書堂』シリーズなんかで高価な古本を犯罪を犯してでも手に入れようとする人に、初めてちょっと共感できた気がする(笑)

本は文庫本も良いけれど、本書を読んだ後は、より個性の出る単行本を読みたくなる。本屋さんで製本や装丁に着目したフェアなんか組んでくれると面白いのになあ、と思った。本好きは読んで損のない一冊だと思います。

レビュー投稿日
2018年11月30日
読了日
2018年10月30日
本棚登録日
2018年9月2日
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