ツタンカーメンの心臓

  • KADOKAWA (2021年7月30日発売)
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感想 : 11
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著者の第一作目を読んだときは、路線が定まっていない感じがしたけど、二作目となるこの本では、方向性が見えてきた気がする。ホラー大賞をとったけど、そんなにホラーを書きたいわけじゃなかったんだ、と思う。

 今作品も著者のエジプト考古学の知識を活かした娯楽作品だ。ツタンカーメンという日本でも馴染みのあるファラオが題材とあって、一作目よりわかりやすい。ツタンカーメンの死の謎、歴代の王の名から削られた謎、父の時代にあった宗教改革と権力闘争、などなど。この手の情報、テレビの特番でもたまにやるし、録画して見てるけど、結構、最新の情報で書かれていると思う。考古学的な蘊蓄も多いので楽しい。「世界ふしぎ発見」っぽい。しかも著者自身がエジプトの遺跡発掘に携わっていたという経験も加わるので、臨場感がある。

 後半からは謎解きとホラー要素がメインになってくる。一応、人はバタバタと死ぬけど、描写が淡白だから怖くない。謎の秘密結社も突然出てくる。もっと伏線が欲しい。主人公のキャラもおとなしい。その辺が前作同様で、改善して欲しいところだ。

 ラストは東京にエジプトの神々が降臨して、大暴れする。これをバカバカしいととるか、お祭り騒ぎととるかは、意見が割れると思うが、なかなか思い切った展開で自分は好きだ。読みながら、VFX駆使した映像が次々と浮かんできた。

 80年代から90年代ってこういう伝記SF小説が全盛期でよく読んでいた。この本を読んでたら、柴田よしきの「炎都」シリーズが好きだったことを思い出した。あれもよくわからない理由で妖怪が暴れて京都の街を破壊してたし。
 
 この本をジャンル分けするとしたら、エジプト伝記SF小説になるのかな。
  
 完全に第三弾があるような形で終わっているので、次回作では、エジプトの神々にはもっと街中を破壊して欲しい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年10月26日
読了日 : 2021年10月3日
本棚登録日 : 2021年10月3日

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