一八八八切り裂きジャック (角川文庫)

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本棚登録 : 200
レビュー : 23
著者 :
cronistaさん  未設定  読み終わった 

 あらかじめ断わっておくと、切り裂きジャックがメインの小説かと思って読み進めていくと、一向に切り裂きジャックが出てこないので退屈する。冒頭部分でジャックの被害者となる女性が登場するので名前を知っている人にはピンとくるが、知らない人にとってはどこが切り裂きジャック?となるだろう。ようやく出てくる頃には下手な文庫の2冊分くらいは読み進んでいる。

 最後まで読んでも、これが切り裂きジャックの正体だ!的な新事実とかが待っているわけでもないので、リッパロロジストもどきの読者を喜ばせるような本でもない。


 でも、「世紀末ロンドンとエレファントマン」ということに視点を変えて読んでいると、結構おもしろい。主人公の日本人国費留学生の目を通して、その時代のロンドンの貴族社会と最貧困層の社会が隣り合わせで形成されている一種独特な街の雰囲気を、それぞれの階級の人々の目線で丁寧に描かれている。その両極端な社会をつなぐ装置としてエレファントマンという奇形の人間が登場している。好奇の目で見られる彼の処遇を観察しているうちに、当時のロンドンの日常が知らず知らずにわかってくるようになっている。
 微に入り細に入り、ロンドンの街や風俗が描写されているので、余分な描写も多いが、それはそれで、もう「地球の歩き方・世紀末ロンドン」ということで楽しんだ方がいいかもしれない。


 後半からは切り裂きジャックがエレファントマンの代わりとなってこの役になる。犯人探しより、この事件を当時の人々がどう見て、どう感じ、どう騒いだか、という点に目を向けて読むといいと思う。


 ジャックの正体は一応明かされるが、どうでもいいような気がした。
 完全に作り話だし、これはそういう本でないので。

レビュー投稿日
2013年12月27日
読了日
2013年12月27日
本棚登録日
2013年12月27日
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