伯林-一八八八年,次郎長開化事件簿 (文庫コレクション大衆文学館 か 5-1)

著者 :
  • 講談社 (1997年10月1日発売)
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感想 : 2
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明治21年、ドイツへ留学中の森林太郎(後の鴎外)が古城で起きた殺人事件に遭遇し、探偵として事件の究明に乗り出す。留学先で出会ったドイツ娘との恋、密室殺人、古城には鉄血宰相と謳われたビスマルクまで登場し……と私があらすじを書くとなんだかとってもトンデモっぽくなってしまうのですが、実際の作品は地に足の着いた作風で、森鴎外が実際のドイツ留学中にあった出来事(史実)と、「殺人事件に巻き込まれる」という創作との混ぜ込み具合のバランスが絶妙で、読んでいて「ああ、こういう経験を経る森林太郎もアリだな」と思わせる筆力にグイグイ惹かれました。さすが第十三回乱歩賞受賞作。(これが昭和42年に既に書かれていたとは…驚きました)
ミステリとしては手堅く纏まっていますし、何より若い医学留学生である森林太郎の青春小説として、このミステリの事件部分との絡ませ方が絶妙で大変良かったです。面白かった~。
(この本読む前に、鴎外のドイツ三部作「舞姫」「うたかたの記」「文づかひ」を読んでおくとより楽しめると思います! 全部青空文庫に入ってます)

「次郎長開化事件簿」はこれまた実在した清水次郎長を主人公に据えた捕物帖風の連作短篇。こちらは大衆文学っぽいノリが強めの作風でトリック部分は軽めの印象ですがサラリと読めてかつ人間ドラマに仕上がってて、史実の料理の仕方が上手い作家だなぁと。2作、堪能しました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 国内ミステリ
感想投稿日 : 2019年7月5日
読了日 : 2019年7月5日
本棚登録日 : 2019年7月5日

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