これからの男の子たちへ 「男らしさ」から自由になるためのレッスン

  • 大月書店 (2020年8月26日発売)
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何気なく読書ブログで紹介されていて、何の気なしに手に取ってみたのだが、これは自分も含めて男性へのジェンダーに対する啓もうが盛りだくさんなのではないだろうか。

有体な子育て奮闘記やらメソッド紹介といったテイストではなく、論理的に学術的な証拠や事例を交えながら、「有害な男性性」への警句と現代社会人男性軍へのいらだちと諦観、未来の子供たちへの責任といったところを示唆してくれています。恥ずかしい話、自分はジェンダーに平均以上に関心や理解を持っているなどどうぬぼれていましたが、この本から強いカウンターパンチを受け、目が開けた思いです。
特に、男性は生まれながらに特権を否応なしに持っていることへの無自覚、女性への性的被害に対する無理解、無関心は加担していることと同義なのだという憤り。これは、無意識に傷つけている可能性、女性の尊厳を軽視している可能性を日々意識づけしていないと陥っているのではと思わざるを得ない。

P85:
「男性は自分の感情に対する解像度が低い」
自分の身体的反応と感情が上手く整理・言語化できず、不快感や恐れを弱い立場の女性への抑圧的な態度で一蹴してしまう。これは、感覚的にあるあるかもしれない。
女性の率直な感情の発露に対して、対等な言語表現ができてないこと多い。ボキャブラリーが単純に少ない感はある。

P141
感情ンボキャブラリーが乏しい子どもに対しては、親から「痛くない!」、「~だよね」など決めつけずに寄り添うことが肝要。SST的な方法で、「感情のポスター」で絵文字で自分の感情に近いものを示してもらうなども良い。

P186:
エロいは帰属する文化からの「記号化」。どういったものにセクシャルな刺激を感じるかは、人間の本能や先天的な感情ではなくて、環境・文化によって影響受けている。これは、コテンラジオ「性の歴史」シリーズでも再三強調されていたので、ここで思わぬリンクです。
レイプものや痴漢もののAVに性的興奮を感受してしまうのは、AVなどの外的刺激が役割の一端を担っている。あくまで、ファンタジーという観点を忘れてはいけないし、子どもにも理解してもらうよう働きかけは大切だろう。自分の年少時代はモロに影響受けてたし、だいぶバイアスかかった状態で過ごしていたので社会として是正できれば良いですね。

小島慶子さんとの対談。これが本書の中で特に痛烈なインパクトを与えてくれました。現代の大人たちにはもう期待してもコスパが悪いと。もう見捨てられている私たちってどうなの、と忸怩たる思いでございます。でも、パパの発言例って自分もあるあるかも。
ここまで神経張りつめて日々の子育てに挑んでくれているであろう、妻に本当に感謝、だけでなく自分もできる限りバージョンアップした価値観で寄り添っていければと切に感じたところでござい。

P247:
男性の特権はジェンダー的差別は声を上げるための責務があるのだ、これも価値観をぶち壊してくれた概念ですね。そうか、当事者で加害者でなくても(もしかしたら無意識でそうなってしまってるかもだし)、声を上げる責任はあるし、そうすべきなのだな。
後は、女性のマジョリティーの身近な例として、キャリアアップと育児家庭の両立による葛藤、性的搾取に対するストレス(夜道を一人で歩く際の恐怖)、仕事上での扱いの差等々。何か大きな目立つものとしてあるのでなく、日々の中断続的に感じているというところ。

まだまだ知らないことが沢山あるという予感。その無知は、責任放棄だと言われているように感じます。日々アップデートして、日常の行動や思考を正しく修正していきたいと、強く自分へ叱咤していきます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ジェンダー
感想投稿日 : 2022年2月22日
読了日 : 2022年2月22日
本棚登録日 : 2022年1月26日

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