黒船の世紀(下) - あのころ、アメリカは仮想敵国だった (中公文庫 い 108-3)

著者 :
  • 中央公論新社 (2011年6月23日発売)
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■概要
本書は、黒船を起点に日米戦争に至る日本人の精神を、日米未来戦記を解き明かすことで描いたノンフィクションである。Ⅲ部構成で、日米未来戦記がどのようにⅠ勃興し、Ⅱ流行したか、最後にⅢ物語と現実が交錯していくさまを描いている。


■サマリー

[Ⅰ太平洋へ向かうベクトル]
黒船の衝撃が旧体制を崩壊させ、日本人は外圧対策として日清、日露戦争へと進んだ。日露戦争後、脅威の対象は、太平洋を越えて対峙する黒船の国アメリカに向かった。最初の未来戦記、水野広徳の『次の一戦』は、そうした米国に備えよと軍備拡張を主張した。米国では、極東で力を増す日本の脅威を綴ったホーマー・リーの『無知の勇気』が人気となった。



[Ⅱ日米未来戦記の流行]
第一次大戦の時代、日米未来戦記はブームを迎えた。樋口麗陽、押川春浪、佐藤歌鋼次郎、、、といった流行作家が次々生まれた。米国は悪だ、恋やヒーローの冒険、軍拡プロパガンダ、出版社の思惑などが互いに刺激しあう。一方、第一次大戦下の欧州を視察した水野は、近代戦争の悲惨さを知る。英国では、ジャーナリストのバイウォーターが、軍事データと知識に基づく緻密な日米戦シュミレーション『太平洋海権論』『太平洋大戦争』を書き上げた。



[Ⅲ物語と現実の交錯]
水野は、『海と空』『日米興亡の一戦』で東京が空襲される悲惨な姿を描いた。他の作家たちの空襲は、SFや楽天的なエンターテイメントの要素が強く、開戦の空気を励ますことになった。山本五十六は、バイウォーター『太平洋大戦争』をほぼ踏襲する作戦を立て、戦争の結果も同じシナリオを辿った。


■特徴
・通常の歴史書と違って、一般庶民の空気感を読み進めながら感じることができる。
・詳細で緻密な文章から、知らなかった歴史の事実をいくつも発見することができる。
・「日本人は、なぜ米国と戦おうとしたのか」「なぜハワイを奇襲したのか」など、推理小説のように読むことができる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年3月16日
読了日 : 2012年3月13日
本棚登録日 : 2012年2月28日

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