何故か今頃(2017年7月)になって地元のヴィレッジヴァンガードで「ライオンの首」と共に平積みになって販売されているのを発見。(残念ながら一番読みたい「人造人間の怪」は置いてなかった)
2冊買ってもよかったのだが取りあえず初期作品集という事で……というよりも
表紙の触手を絡ませる『タコ型火星人』と三角定規で戦う少女の絵に惹かれたので本書を購入。
60~70年代なら兎も角、今の時代に『タコ型火星人』‼
この ある意味確信犯的とも言えるアナクロな火星人の姿がインパクト大!
見事に自分の心を鷲掴み!(笑)
ストーリーは夜になると火星人が出ると言われる通称 火星高校に好奇心旺盛な少女が忍び込み、現れ襲って来た火星人と戦い………といったようなSFホラーなのかも?
と、勝手な想像を掻き立てて、クリスタルキングの大ヒット曲「大都会」の歌詞の如く 期待と不安を一つにして帰宅。
そして先ずは表題作である「火星高校の夜」から読んでみる。
少年と少女の亡くなった母への想いを描いたホラーというよりもややホラー寄りのファンタジーといったところかな?
どことなく切ない物語だなあ………………って!ちょっと待て‼ しみじみとしている場合じゃなひ‼
肝心の『タコ型火星人』がどこにも出て来なひ‼
これは、一体どういう事だ!?
あっ!本のタイトルは「火星高校の夜」でも『タコ型火星人』は他の話に登場するんだ‼
そうだ!そうに違いなひ‼
気を取り直して最初のストーリーから読み直し。
「呪いのグレートハンティング」、タイトルからして怪しさムンムン(笑)
きっと、火星人が地球人を拐いに来る話なのかも知れなひ…………
人あらざる物の共生関係を描いた物語。
どこかで読んだ記憶があるんだけど………
苦手な芋虫(ギャ~!)が出てくるので生理的にちょっと無理。
絵具では出せぬ「色」に魅せられた男の狂気と破滅を描いた「地獄の色」。
虫を潰して(ギニャ~!)色を塗るというところはどこか日野日出志の「蔵六の奇病」(こちらは膿だけど)を彷彿させる。
地味な少女が絵や写真のモデルを続けていくうちに彼氏が出来、美しさを増していき描き手の理想(恋心)は無惨にも打ち砕かれてしまう………昔の青春ドラマなんかで見られたストーリーだがそれをホラー仕立てにしたのが「顔のないデッサン」
語り部の少女が何故、吉田よし子の新たな描き手になったのかの説明がないのがモヤッとする。
よし子がどれ程変わってしまったのかを1コマ(68P4コマ目)で表現しているのはお見事。
「夜空に消える」
前半でファンタジックというかメルヘンチックな物語と思いきや、後半から徐々にホラーへと移行していく展開の仕方がうまい。
ラスト、星野満が本当の姿を現すところは絵の感じといいどこか水木しげる大先生の貸本作品的。(99P5コマ目~100P1コマ目)
「怪談乳房榎茸」
短編よりは中編(もしくは長編)で読んでみたい作品。
正一に裏切られ、出ていくヒルコの姿が切なく悲しい。
あぁ 可哀想なヒルコ。
「暗黒深海」
単なる食人物ではなく、「材料」を深海魚に変えて食べるというのが目新しい。
なんて悪趣味で残酷なアイデアなんだろう(誉め言葉)。
「ジグ・ザグ・ボックス」
日常と非日常を繋げる希望なのかそれとも絶望なのか?
ラスト、天へと伸びた一本ロープが不思議な余韻を残す。
203P(1、2コマ目)に瓶詰にされた少女が描かれているが
これは、丸尾末広(少女椿)へのオマージュ?
画風としては初期作品集という事で長田ノオト(グレートハンティング)、伊藤潤二(顔のないデッサン、怪談乳房榎茸)、丸尾末広(暗黒深海、ジグ・ザグ・ボックス)、細かいところでは佐伯俊男(怪談乳房榎茸の弓子の裸体)、犬木加奈子(ジグ・ザグ・ボックスの瓶詰にされる少女)の影響を受けているようにみえた。
完全にハマったとは言えないが取り合えずは「ライオンの首」も買ってみようかと思…………ん? 何か忘れているような…………え~と…………あっ‼『タコ型火星人』の事をすっかり忘れていた‼
というか、『タコ型火星人』なんてどこにも出てこなひ‼
何故、本編に出てこなひ『タコ型火星人』が表紙に描かれたのだろう!?
これは「人造人間の怪」ならぬ「火星高校の夜の表紙の怪」だ‼
あ~~‼
モヤモヤする‼
ホームズでも明智小五郎でも、この際 北見小五郎でもいい‼
誰かこの謎を解いてくれ~~‼
- 感想投稿日 : 2017年8月20日
- 読了日 : 2017年8月5日
- 本棚登録日 : 2017年8月20日
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