「AさせたいときにA」と直接的に言うのではなく、「AさせたいならB」と間接的に伝えて、子どもを知的に動かそうという内容。
間接的に伝えることで、子どもはBの言葉に惹かれて思考を巡らし、AとBの差を子どもが埋めて動けるようになるということだろうか。
教師側の発想としては、教師がさせたいことを抽象的に捉え直して、別の具体的な指示に落とし込むことなのだろう。
Bに入る「①物 ②人 ③場所 ④数 ⑤音 ⑥色」はどの子も共通してイメージをもてるものを設定するのが良いのだろう。
子どもを動かす原則について述べられた本だけれど、『子どもを動かすとは、「子どもの心を前向きに動かす」なのである。』ことは忘れずにいたい。

2021年3月22日

読書状況 読み終わった [2021年3月22日]
カテゴリ 教育書
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うつ病を発症し、そこから2度の休職を経て、現在もサラリーマンとして勤務している筆者による仕事術の本。
この本には復職して(筆者の場合、復職後に転職もして)働いていくために、筆者が見つけた42の工夫が書かれている。

うつ病の急性期や回復期の治療に関する本は多数ある。一方で、復職してうつ病と付き合いながら働いていくことに関して書かれた本はそう多くはない。一方で、多くのうつ病患者は、生きていく上で働くことについて向き合わないといけない。うつ病発症、休職、復職を経て働いている人はSNSで探せばたくさん見かけることができるが、個人が行っている復職のための、そして働き続けるための工夫については発信している人は少ないため、一つひとつが参考になった。

また、世の中に仕事術、時間術、職場の人間関係など書かれた本は多数あるが、この本ではそれらのビジネススキルを「うつ病からの復職」という視点から拾い上げ、さらにうつ病患者の気持ちの面から、なぜこの方法が良いのかを掘り下げている。どうしてこの手法や考え方が役立つのか筆者の経験を踏まえながら書かれている点も勉強になった。

あとがきに
「病気を責め、自分を責め、うつ病を理由にして、たくさんのことを諦めて生活するのも一つの選択肢ですが、ハンディを背負っていても、普通の健康な人と仕事をし、切磋琢磨し、普通に生活を送ることは可能だと私は信じます。思うようにはいかないかもしれませんが、小さな工夫をすることで、過酷なビジネスの現場でも、平常心を保ち、心を守り、高いパフォーマンスを発揮しつつ、楽しく笑って生活することは可能です。小さな工夫は跳び箱のロイター板のような物です。」
とあり、筆者が見据えているのは、復職して働いても、いずれは普通の健康な人と同様に仕事で結果を出すことなので、その目標がはるかに高いもののように感じられる人もいるかと思う。
ただ、復職してすぐにそこに到達できるとは思ってはいない。復職までにしておく身の回りのこと、復職してすぐの働き方、職場での病気の打ち明け方など、工夫は細かく地味なものも多い。
はるかに高い目標にむかって、一歩一歩を積み重ねていけるように、些細な、しかし大切な工夫が書かれている。
小さな工夫が散りばめられているので、自分の体力の度合いやうつ病との付き合い方に応じて、自分に必要なところをつまみ食いしながら読むことができる。

お名前で検索したところ、twitterのアカウントを見つけ、プロフィール欄を見たら、2021年3月現在、闘病期間よりも寛解期間のほうが長いとのことだった。そこに何よりも勇気づけられた。
これからもどうかご自愛ください。

2021年3月12日

読書状況 読み終わった [2021年3月12日]
カテゴリ ビジネス

筑波大附属小学校で長年国語を教え、国語に関する著書も多数出版されている白石範孝先生が、筑波附属小を定年退職されるにあたって出された本。

「なんのための国語なのか?」「なぜ、国語があいまいな教科になってしまったのか」など、白石先生が抱く国語への疑問と、その疑問からなぜ「用語」「方法」「原理・原則」や「3段階の読み」「観点」などを生み出すに至り、こだわってきたのか、その思いが語られています。そこには白石先生が現在の日本の国語教育で課題と感じる「感覚とイメージ」の国語の授業への疑問と違和感が発端としてあるそうです。

それぞれの「用語」「方法」「観点」については他の書籍に詳しく記述されているのでそちらで確認してほしいですが、特にこの本の読みどころは合間に挟まれた《ミーティングルーム》。
白石先生と国語について研究をしあっている仲間(匿名ではあるが)との談話が載っています。
そこでは
「白石先生は、よく『国語も算数のように……』っておっしゃいますが、ちょっと誤解されてしまうんじゃないかと、最近思うようになったんです。」という質問や、接続語に着目して読むことをテクニックと指摘する声への白石先生の回答が書かれています。
そこを読むと、白石先生自身、ツールにこだわることの危険性を理解しつつも、それでもなお何も与えずに、ただ読みなさい、書きなさい、考えなさいと生徒にさせている国語への強い問題意識を持っていらっしゃることが分かりました。

白石先生の本を手にとったきっかけは、自分自身の授業が「感覚とイメージ」の国語の授業になっていると感じたことからでした。そこで白石先生の「用語」や「方法」などに基づいた授業方法を知り、授業づくりで大いに参考にさせていただきました。大変お世話になっていた者としては、上記のこだわりに至るまでの過程を知り、さらに頭が下がる思いです。
また、国語と道徳が混同してしまうこと(国語の読みで道徳教材を読んだり、国語で登場人物の気持ちに過度に踏み込んでしまうこと)を白石先生も若い時に経験し、今も道徳は苦手意識があることを知り、親近感を感じました。

白石先生の本だとおそらく『白石範孝の国語授業の教科書』(東洋館出版社)が有名だと思われますが、そこに載っている「物語の10の観点」「説明文の10の観点」「詩の5の観点」と本書に載っているそれらの観点の項目が若干変わっていました(「登場人物」と「語り手」が別々だったのが、「登場人物」と「語り手」を両方を含んだ「人物」の観点になっていたなど)
日々実践を見直されているのだと感服しました。

白石先生の国語への教育哲学を知りたい方はぜひ。

2021年3月11日

読書状況 読み終わった [2021年3月11日]
カテゴリ 教育書(国語)

自らが偏愛していることを出し合うことで、意外なつながりや共通点がわかり、親しみが生まれやすいということなんだろう。
「野球」が好きよりも、「プロ野球」「社会人野球」「高校野球」「女子野球」のどれか、「プロ野球」なら「どのチーム」か、「どのチーム」の「どの選手」が好きか、「その選手」の「どんなところが好きか」とどんどん具体化して偏愛を語るようにすると、ハマる相手が見つかるかもしれない。

紹介されたそばから内容を忘れられてしまう自己紹介に変化を与えるための方法の一つとして取り入れてもいいかもしれない。

2021年3月2日

読書状況 読み終わった
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「聞き方スキル」の四段階とそれぞれのスキルの授業例が記載されている。

黙って行儀よく姿勢を良くして話を聞いていれば、話を聞いていると言えるのか?
学校教育において長年良しとされていたその指導内容に一石を投じる。教師が生徒の興味を引く話し方をすれば、自ずと生徒の「聞き方」も伸ばされるはず、という学校教育界での思い込みがある。
生徒に身につけさせたい「聞き方スキル」を伸ばすことに重点を置いている。
生徒に、スピーチのスキルと合わせて伸ばしたい力である。
一緒に『聞き方スキルを鍛える授業づくり』(堀 裕嗣・研究集団ことのは 編著・明治図書・2002年)を読みたい。

2021年3月4日

「教師がモデルとして読むことを示すためには、まず教師氏自身が本を読まなければなりません。」
「なかには、ブックトークについて二つのことを恐れている生徒がいるものです。すなわち、読むことと人前で話すことです。本について話すのが当たり前だという感覚を生徒がもっていると、私は思っていません。なぜなら、彼らの多くは、教養の高い大人が自分の読んだ本や経験について話している様子を見たことがないからです。」

教師が本を読み読書家となることが何よりも大事だと感じた。
生徒にとっての身近な大人が教師なのだから、読書家のモデルとして、今、何の本を読んでいるのか、何の本を読み終えたのか、何の本を読むのを途中で止めたのか。そういうことを授業の5分や朝のSLRの5分でも使って、生徒に伝えることで、読む文化を醸成するための土壌をつくることに繋がるんじゃないだろうか。
仕事をしながら読んでいけるかな……

2021年3月1日

読書状況 読み終わった [2021年2月26日]
カテゴリ 教育書(国語)

一番の気付きは抽象と具体の往復が大事だということ。
また、具体側からは抽象側を見ることができないマジックミラーだというのは新たな知識だった。

会話や仕事をするときに、それぞれがそれぞれの抽象・具体レベルで話しているから、それらを調整できると良いのだろう。仮に具体側から抽象側が見えないとすれば、抽象側にある者が相手のレベルまで具体的に物事を噛み砕いて伝えられるといいのだろうか。

具体から抽象へ、抽象からまた別の具体へという思考の流れを持てるようにしたい。

2021年3月10日

読書状況 読み終わった [2021年3月10日]
カテゴリ ビジネス

漫画とコラムを読み終えて、ひとしきり笑ったあとに、文庫本に収められているスリップのエピソードを読んで、楽しみながらもゾッとした。笑える漫画だけれど笑えない状況。笑えない状況だけれど思わず笑えてしまう。

『湯遊ワンダーランド』も合わせて読むと、まんきつさんがアル中の真っ只中でサウナと出会い・サウナへのハマりが複雑と入り混じって二重に楽しめる。

2021年3月1日

読書状況 読み終わった [2021年2月14日]

意外な幕引き。サウナを一つの救済として、自分の人生を生きるということなのだろうか。
『アル中ワンダーランド』も並行して読むと感慨深くなる。

2021年3月1日

読書状況 読み終わった [2021年2月9日]

色んなサウナ巡り、サウナでの新たな出会いがあり、家とサウナが中心で家族とのやりとりが主だった1巻とはまた別の趣きがあって面白い。

2021年2月8日

読書状況 読み終わった [2021年2月8日]

水風呂に入るか入らないかの葛藤が一つのクライマックス。自分も水風呂に浸かるまで躊躇していたな。

2021年2月8日

読書状況 読み終わった [2021年2月7日]

『小一教育技術』での連載をまとめて、加筆・改筆したものです。
そのため、小学校低学年を受け持っているような特に若手の先生を対象に書かれています。

他人の気持ちを慮ることで、かえって気を揉んでイライラしたり気持ちが落ち込んでしまうような先生は多いかと思います。
この本では、自分の気持ちを大切にして、教育現場で直面する様々な問題(子ども、保護者、同僚など)に向かっていこうという内容が書かれています。

これでいいのかな、と気を落としがちな先生の気持ちを救ってくれるような一冊です。

2021年2月5日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2021年2月4日]

堀氏のセミナーに参加して、本書で紹介されている、自主開発教材「はまなす」と「ブランコ乗りとピエロ」縦のコラボ、横のコラボの授業を模擬授業を受けさせていただいたことがある。
「はまなす」が流れたあとの会議室を包んでいた静寂に、堀氏の本気度と凄みを感じたのを覚えている。

道徳のネタ本ではない。道徳授業を考えていくための視座や考え方を示してくれる一冊である。しかし、その考え方は、教師に自らの人生を振り返らせ、生徒に本気で語れることは何なのかと問いを投げかけてくる。
見えていなかった道徳の授業の可能性を教えていただいた。

2021年3月5日

読書状況 読み終わった [2021年2月18日]
カテゴリ 教育書(道徳)
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人柄志向から事柄志向へ。それも極から極へ振れるのではなく、ニュートラルなスタンスで教師のあり方、さらには教育のあり方を捉え直そうという本。
「人柄志向」ではなく、あくまで「事柄志向」へ。ハートは熱く、頭はクールに。

2021年3月5日

読書状況 読み終わった [2021年2月12日]
カテゴリ 教育書
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事例では小中高と様々な学校現場での先生たちの苦悩をうかがい知ることができる。あるある、こういう状況ありえるな……と思いながら読み進めた。

困難な状況に直面したら、同僚に相談したり愚痴を言ったり、状況によっては学年や学校全体で組織で対応にあたることが大切。教員が個人的な仕事だからこそ一人で抱え込まずに、胸の内を出していこうということ。同僚との交流を経て、落ち込んでいた状態から徐々に調子が上向きになっていくという事例には励まされる。

自分の場合、問題を一人で抱え込みがちというのが陥りやすい思考パターン。というか、何度もドツボにはまってきた。自分の思考の癖を把握して、人に話すなどして外に出すようにしたい。

2021年2月1日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2021年2月1日]

様々な角度から現代の学校現場の問題や教師の在り方について記述されている。短くて読みやすいが、どの講もずっしりと重い。表紙に「世界観を広げる」とあるように、自分の考えがぐいぐいと広げられる。

なるほどと思わされる以上に、そこまで考えなければいけないのかと、筆者の考えの深さ、広さ、視座の高さに圧倒されてしまう。
自分は「学校的リアリズム」を未だ信じているのかもしれない。それは学校に長くいたのと社会経験が少ないからだと思われる。このスタート地点から始めていくしかない。

あとがきで「自分の頭で考え、自分自身の信条に根ざした判断しかしてはいけないのではないか」と記している。未熟なりに自分の頭で考えることが必要だと痛感されられる。



第一講〈HOW〉から〈WHY〉へ転換する
第二講〈明後日の思考〉で考える
第三講〈学校的リアリズム〉を体現する
第四講〈織物モデル〉を指標とする
第五講〈人柄思考〉から〈事柄思考〉へと転換する
第六講〈補助線型思考〉を体得する
第七講〈指導主義〉から〈感化主義〉へ転換する
第八講〈十割主義〉から〈六割主義〉へ転換する
第九講〈先生と呼ばれるほどの馬鹿でなし〉の矢を自分自身に向ける
第十講 眼差しを遠くに向ける

2021年2月8日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2021年2月8日]
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様々なレトリックを多様な文章引用から学べるのが良い。
文章の引用から作品を楽しむということもできる。

2021年3月7日

読書状況 読み終わった [2021年2月28日]

筆者が中学校で実際に学年主任としての実践をもとに構成したもの。TOSSの「黄金の3日間」や野中信行先生の「3・7・30の法則」が小学校での実践であるのに対し、教科担任制がある中学校用に「3・7・30・90の法則」に作り替えている。
最初の3日間で心理的距離を縮め、7日間で学級ルールを確立、残りの30日間で学級ルールの定着、90日間で授業ルールの確立と定着を図っている。

なぜこのルールなのか、生徒に対してなぜ言動を行うのか、その教育哲学と実践が密接に結びついている。
言葉がけの例、特に生徒全体を前にして語りかける言葉の具体例が豊富で参考になる点が多い。

資料増補版となり具体的な資料からその実践を知ることができる。ここまで細かく決めるのか、そして決めることで得られる学年団の安心感が生徒を包み込むのだろうと思う。

新年度自分の立ち位置がどうなるか分からず不安でたまらない状況で、事細かく具体的に実践が書かれているこの本を読んで、不安が軽減された。原理原則をもって生徒に向き合っていくのだと。改めて読み返して良かった。

2021年3月20日

読書状況 読み終わった [2021年3月20日]
カテゴリ 教育書
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再読。
「反・社会」生徒でもなく「非・社会」生徒でもなく、「脱・社会」生徒への生徒指導ができるようになるようにと書かれた本。
「事実を確認する10の原則」や「生徒を説得する10の原則」を知らずに問題行動やいじめの対応にあたることはできないと感じる。
例えば、生徒同士がつかみ合いの喧嘩をしていて野次馬が集っていた状況に遭遇した場合、教師はどのように行動するか(男性教師と女性教師でも異なるけれど)他の生徒を危険のないように距離をおかせ、危険のないようにそして体罰と思われないように生徒同士を引き離すにはどうすればいいか。かつては職員室のなかで伝えられていたであろう内容も扱っている。(自分はこの本で初めて知った)
中学校・高等学校の先生なら身につけておかなければならない事柄が列挙されている。

2021年3月10日

読書状況 読み終わった [2021年3月9日]
カテゴリ 教育書

改めて読んだ。
あとがきに「失敗しないための勘所」「失敗しない授業づくり」とあるけれど、その基準となるラインはどこまでも高く、気が遠くなるけれど、そこから始めるしかない。

2021年3月6日

読書状況 読み終わった [2021年3月6日]
カテゴリ 教育書(国語)
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再読。
徹底したシステムを敷き、その上で生徒の自主性や主体性を発揮させていくという形。自分はどこまで徹底できていただろうか。「成功するための」学級経営ではなく、「失敗しないための」学級経営とあるが、その要求するところはとても厳しく、基準は高い。

2021年3月8日

  • 再読。
    "しかし、いまの時代、何位より必要なことは「成功すること」ではなく、「失敗しないこと」なのです。学級経営でいえば、まず必要なのはすごくいい学級をつくることではなく、まずまず大過なくやることができる、そういう能力です"
    その失敗の基準はどこまでも高いと感じてしまう。けれどそこから始めるしかない。

    再読了日:2021年3月7日

読書状況 読み終わった [2021年3月7日]
カテゴリ 教育書

ドリブルドライブモーションオフェンスについて書かれた日本語の書籍はごく僅かです。ドリブルドライブモーションオフェンスの入門書として良いと思います。

2020年11月7日

読書状況 読み終わった [2020年11月7日]

前作『ラブという薬』では二人の対話集だったのが、今回はイベントを催した際に二人が参加者の質問に答えていったのをまとめたものになります。
質問に答えていくといってもズバリと問題を解決するような鋭い回答をするのではなく、二人は質問を受け止め、質問者の気持ちを想像し、色々な可能性を示し、時には話が脱線しながら、提案にもなっていないような回答をしていきます。

この本にも収録されている初回のイベントに参加しました。
雰囲気が非常に心地良かったのを覚えています。二人と司会のトミヤマユキコさんの質問を受け止める空気感をさらに会場全体が包み込むような。
辛さや苦しさは完璧に理解することはできないけれど、分かろうとしている雰囲気が会場にありました。
そのときの空気感がよくまとめられていると思います。

2020年10月31日

読書状況 読み終わった [2020年10月29日]

いとうせいこうさんと星野概念さんは口ロロ(クチロロ)バンドのメンバーとサポートメンバーという関係であり、星野さんはいとうさんが通っている精神科の医師。つまり患者と主治医の関係でもある。二人が、いとうさんの悩み、星野さんの悩み、精神医療の基礎や診療のシステム、怒りの表明の仕方、SNSを始めとしたインターネットのスピード感への危惧、社会への不安などを語り合っている。

【傾聴は愛】
印象に残ったのは傾聴や共感への考え方。
いとうさんは傾聴について次のように話している。

“今、星野くんの話を聞いてたら、やっぱり傾聴って愛だよなと思った。愛してるよ、と自分が言うよりも、まずその人の話すことをとにかく聞く。逆に愛されるっているのは、相手に自分の話を聞いてもらうことだと思うんだよ。”

また、星野さんは次のように話す。
“今、聞いていて思ったんですけど、やっぱり傾聴するってこと自体が、「YESの姿勢」っていうか、相手を論破しようとしてないんですよね。”

職業柄、自分よりずっと年下である生徒と面談する機会は多い。その中で相談を受けたりアドバイスを求められたりする。生徒の社会経験の少なさや精神的な未熟さから、本人にとって大きな悩みも大人からしてみたら些細なものだと感じてしまうことはある。しかし、こちらが些細だと感じたとしても当事者からしてみたら、重大で深刻で繊細な問題である。そこで分かった顔をして大人なアドバイスをしても、本人には届かない。悩みを抱いている本人の気持ちに寄り添うこと、寄り添う意思があることを伝える手段として傾聴があるのではないかと思う。まずは相手の思うことを受け止めるところから対話は始まるのではないかと。そして、この姿勢や態度は生徒との関係に限らず、保護者、同僚、人間関係全般に通じることだと思う。

【傾聴の仕方を見る】
2人の対話をまとめたものであるが、患者と主治医という関係でもあるので、精神科の個室の中での様子を文字を通じて見ているかのように感じた。
傾聴の技術や方法について書かれた書籍は数多くあるし、この本の中でもそれらの技法について言及されている。しかし、技法を知識として知っていても、具体的にどのような言葉や態度として現れているかは、精神科医やカウンセラーをしている者自身か、患者としてそれらの職業の方から話を聴いてもらった者にしか分からない。
本書の対話の中で星野さんは、いとうさんの話に耳を傾け、共感し、感情にラベルを貼ったり言い換えたりしながら対話を進めていく。これらは傾聴そのものではないかと感じた。(星野さんはプライベートで意見に齟齬が生じ口論になりそうなときも、相手の話を傾聴し解決を試みるそうだ)。2人のやりとりを見て、精神科医やカウンセラーの話の聴き方はこういうものだ!というのは言いすぎかもしれないが、傾聴や共感というのは具体的にはどうすれば?という疑問には、星野さんの軽やかな話の受け止め方が何かしらのヒントになる。

他には、ある出来事があったときにSNS上で即座にリアクションを求められている(ように感じてしまう)ことや「炎上」など、ここ最近のSNSへの違和感にも言及している。
即効性があるわけではないけれど、社会になんとなく違和感を感じている人やなんとなく生き辛さを感じている人の気持ちを救うような一冊。

2020年10月29日

ネタバレ
  • 再読しました。

    再読了日:2020年11月26日

読書状況 読み終わった [2020年11月26日]
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