マシアス・ギリの失脚 (新潮文庫)

  • 新潮社 (1996年6月1日発売)
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感想 : 64
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始まりはガルシアマシアスの族長の秋の世界観を連想させたのだが、族長の秋の大統領とは違い、本作の主人公であるマシアス・ギリ大統領は優れた政治家でありながら、多くの人が感情移入できるであろう普通の人だった。
政治、経済、国際問題、戦争、民族、歴史、霊的な力など
の多くの要素をぎゅうぎゅうに詰め込んであり、舞台は小さな島国でありながら大きな世界の広がりを作品の中に感じることができる。
タイトルの通り失脚の話であるが、訓話的なところはなく、あくまでただの物語。人間と、人間よりももっと大きな計り知れない存在、世界、あるいは宇宙の意志のようなものが介在する物語になっている。この作品がどんな話かということはとても一言ではまとめきれず、まるで現実のようにどこまでも広がっているような読後感がある。
バス失踪の不思議なエピソードはガルシアマルケス的、どこか陰謀的な大きな力の存在はピンチョン的、最後の物語のくだりはフォークナーのアブサロム、アブサロム!を連想させた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年2月27日
読了日 : 2020年2月27日
本棚登録日 : 2019年1月5日

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