余と万年筆

著者 :
  • 青空文庫 (2002年5月27日発売)
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感想 : 3
5

明治時代の小説家はいったい何で原稿を書いてたんだ?
筆と墨?鉛筆っていつから日本にあるの?万年筆は?
と疑問を持って「夏目漱石 鉛筆」で検索して辿りついたのがこの随筆。
さっと読んで、ふーんやっぱりもう万年筆があったのかと納得しながら、「じゃあこの、彼岸過迄を書くのに使ったペンっていうのはどんなペン?」と新たな疑問が。
きりがないのでダメモトで父に訊いてみたら、「こういう細い竹の先に一個10円程度で売ってるペン先をつけてだな、いちいちインク壷に突っ込んで補充しながら書くんだよ。俺も小学生の頃は使ってた」と意外にもきちんとした返答があり、随筆の内容とも合致してようやく満足。
しかし、夏目漱石ともあろう方がセピヤ色のインクがいいという他には特に道具に拘りなく、買った万年筆はきちんと洗わないしもらった万年筆は「器械体操の真似をしてすぐ壊して仕舞った」だし、随分不器用かつ大雑把に扱っていたのだなあとちょっと呆れて笑ってしまった。
ペリカンの扱いづらさを「随分持主を虐待した」なんて表現したり、「其決心の底には何うしても多少の負惜しみが籠っていた様である」なんて万年筆への未練を渋々認めたり、漱石のユーモアには本当に楽しくなる。可愛い。(笑)
そしてあまり関係ないけど、男のひとの収集癖というものは子供の頃からいまいち理解できないもののひとつだ…と煙管気狂のくだりを読みながらつくづく。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ
感想投稿日 : 2013年9月1日
読了日 : 2013年9月1日
本棚登録日 : 2013年9月1日

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