もしかして、今あちこちで繰り広げられている紛争を予言していたのかと思ったほど臨場感があり、斬新というかエキセントリックな兵器や装備の説明でどうにか、これがSF小説だということを思い出した。
クラヴィスとジョン・ポールは鏡合わせのような、一対ともいうべきキャラクターだと思う。どちらも家族を失い喪失感を抱え、一方は虐殺を遠回しに仕掛け、一方はそれを制圧する。そしてそんな恐ろしい残酷な現場に関わりながらも、頭の中は妙に冷め正気を保っている、というような。
特別な存在だったルツィアを目の前で失い、特別な絆と罪悪感を感じさせていた母が、自分のことをさほど心に留めていなかったと知ったクラヴィスだからこそ、「虐殺の文法」を用いてアメリカを虐殺の場にしてしまうラストは納得。
日本語による作品なのに、ちょっと翻訳されたような、海外SFやミステリのような文体も魅力的だった。
「虐殺の文法」ももちろん作りごとなのだけど、でも実は現実に存在していてもおかしくない…と思わせられる現在の世界情勢が、やりきれない。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
国内小説
- 感想投稿日 : 2014年8月27日
- 読了日 : 2014年8月17日
- 本棚登録日 : 2014年8月27日
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