敗走記 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2010年7月15日発売)
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本棚登録 : 392
感想 : 37
5

第二次世界大戦にまつわる短編集。

さすが、水木作品のクオリティの高さ。
戦争体験しているからこその実際の戦場の厳しさと、水木センセイのユーモア漂う軽やかさが絶妙にブレンドされている。

「敗走記」
奇跡の生き延びた兵士に下される日本軍の軍隊としての不条理

「ダンピール海峡」
日本国旗を守りきることを使命とされた兵隊の悲劇
水木さんのあとがき
「南方の入道雲をみると、いつも「これが最後…」と何回も思ったことがある。このダンピール海峡を渡った兵隊の気持ちを(なんともいえない気持ち)「ダンピール海峡」という作品にした」

「レーモン河畔」
戦場の美女が無事に救われる
水木さんのあとがき
「明日死ぬかも知れぬ戦場に現れた美女が、なんと、無事に後方まで下がり、今日まで生きのびるという、めずらしい話だ。そして二人のうち一人は、現在、東京にいる」

「KANDERE」
南国の原住民との交流から数奇な奇蹟が起こる。

「ごきぶり」
戦争に翻弄され、戦後も先犯として巣鴨で処刑された名もない一人の男の人生

「幽霊艦長」
自ら犠牲となって敵の前に散ることで味方を救った宮本艦長。
「昨夜の激戦のあった海面はうそのように静まりかえっていた・・・」という場面が印象深い

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年3月14日
読了日 : 2021年3月8日
本棚登録日 : 2021年3月8日

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