ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

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本棚登録 : 6873
レビュー : 940
著者 :
desicoさん 文学・評論   読み終わった 

ひさびさにSFを読んだ。
SFだけじゃなくミステリーや哲学的な要素も含んでいて面白かった。

21世紀初頭に発生した<大災禍>。
それは全世界規模で不安が巻き起こり核爆弾を互いに打ちまくった大災禍。
人類は社会の要素である価値観を植えつけた世界に移行し、健康であり争わない高度な医療経済社会を築いていた。

高度な医療経済社会では、身体の状況や感情がすべてサーバーに送られ、悪い変化の兆しがあるとあらゆる処方箋を提示し実行できる支援をしてくれる。病気も肥満もない健康体。つまり身体の状態管理維持支援をフルアウトソーシングしている。

みんな同じ肉体。みんな理想の肉体。
体調変化に気を配る必要がない世界はスマートかもしれない。
世界は進化するけど個は退化ですよね、やっぱり。

この小説は「人ってなに?」を突きつけてくる。
身体の状況をフルアウトソーシングすることを許容するならば、「意志」も第三者にアウトソーシングしてもいいのではないか?
脳も身体の一部じゃないのか?と。

争い、病気、自殺、不安をなくし進化させる世界を突き詰めた到達点にあるハーモニー(調和)とは...。

たどり着くハーモニーな世界の仕組みは理論的に正しいのかもしれない。
でも感情が正しいと理解しない。
理論的に正しい、統制的な世界を望むのか。
統制されていない理不尽な世界が遺る個の感情・意志のある世界を望むのか。

統制的な世界に、個を認識できない、個を知らない世界に生まれてしまったら、それが世界でありとても生きやすい世界かもしれないですね。
でも争いがあるからこそ、矛盾を抱えるからこそ進化するんじゃないかな。
ハーモニーは計算されつくした世界だけじゃなく、ノイズからも生まれると思う。

地球を滅ぼさないハーモニーを構築しつつ、ノイズを許容できる世界が訪れますように。


著者が生き続けていたら読み応えのある作品にもっと出逢えたんだろう。
残念です。

レビュー投稿日
2012年12月9日
読了日
2012年12月9日
本棚登録日
2012年10月21日
4
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