物語 ドイツの歴史―ドイツ的とは何か (中公新書 1420)

著者 :
  • 中央公論新社 (1998年5月25日発売)
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感想 : 38
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ドイツに旅行に行くためにお勉強。この本は思想・文化的背景からの歴史アプローチが多く、ただの歴史本ではないため興味深い内容となっている。

今回は、なぜドイツで魔女狩りやナチスの台頭が起こったのか、ということが大きな命題だった。
魔女狩りについては…
ドイツは森が多く、日本と同じようにそこには神々が宿っていると信じられていた。キリスト教の支配下になっても、他の地域より土着の宗教が長く生活の中に取り入れられていたのだろう。それ故、どの地域よりも強力な方法で人々のキリスト教化と土着宗教の弾圧が行なわれたのだと思った。

ナチスについては…
ドイツは地理的にヨーロッパの真ん中に位置しているため常に他国からの侵略の脅威にさらされており、統一も遅れたために公領のるつぼだった。統一も遅れれば帝制の崩壊も遅れ、植民地への進出も先を越される結果に。日本もそうだが、出遅れた領土拡大政策を取り戻すべく、過激な行動に出た可能性が高いと思った。

思えば今のドイツは私が生まれてから出来たまだまだ若い国。統一ドイツでは東西格差が未だ大きな問題になっているという(友人の話だと「東の人は見れば分かる」とのこと)。一方、ドイツには亡命者を受け入れる法律(アジール法)が存在するため、たくさんの人々(もはや難民)が押し寄せているという。「外国人保護よりも旧東ドイツ国民に職を!」ということで、外国人に排他的な風潮やネオナチの台頭を招いているという。

世の中は不安定要素があると自分を守るために民族主義・排他的傾向に走ることが多い。今の中東でのイスラム回帰も同じようなことが言えるのかもしれない。

色々なことを考えさせられた一冊であった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史・政治・経済
感想投稿日 : 2011年4月30日
読了日 : 2011年4月29日
本棚登録日 : 2011年4月30日

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