画家として有名な著者が、地位も捨て42歳にして移り住んだ際のタヒチ紀行文。今でこそ南半球の楽園として有名となっていますが、1891年、フランスから60日をかけて船旅で渡った当時の生活を、楽園万歳といったお気楽な観点ではないところで描いていて興味深いです。俗世に嫌気がさして逃れたはずのタヒチに、同じヨーロッパの俗世が進入していた様を目の当たりにして身勝手に失望するゴーガン。侵略者であるヨーロッパ人としての著者と、侵略された原住民との間の互いに疑いの目で観察しあう緊張感と孤立感。あこがれてはいるものの野蛮人・食人族として捉えていたヨーロッパ人の目線も素直に描いています。そうはいっても、一人身はさびしく欲求不満も重なって、いろんな村へ恋人探し。徐々に人々と接触していくうちに次第に視点が変わっていく姿が率直につづられています。タヒチに行くときは絶対に持っていく本だな。これは。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
海の本
- 感想投稿日 : 2009年9月12日
- 読了日 : 2009年12月4日
- 本棚登録日 : 2009年9月12日
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