新訂 方丈記 (岩波文庫 黄 100-1)

  • 岩波書店 (1989年5月16日発売)
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養和ようわの飢饉(1181)。治承・寿永(じしょう・じゅえい)の乱(1180-1185)

死体の額に阿の文字を書く僧侶。阿は真実と求道心、吽は智慧と涅槃。

他人を頼りにすると、我が身は他人の所有物となる。他人をかわいがると、心は愛情のために使わされる。

庵(いおり)の西は見晴らしがよい。西方浄土に思いをはせる。

春は藤の花。紫の雲。
夏はほととぎすの声。冥土の山路の道案内。
秋はひぐらしの声。はかない現世の悲しみ。
冬は雪。積もり消えてゆく罪過。

朝、行き交う船を眺める。水上を船が通過したあとに残る波。桂の木に風が葉を鳴らす夕方。

松風の音に秋風楽(しゅうふうらく・雅楽)を重ねて合奏。水の音に流泉の曲。

つばなを抜き、岩梨を取り、ぬかごをもぎ取り、せりを摘む。

遠く故郷の空を眺める。

石間寺に参拝。
猿丸大夫の墓を探す。
桜の花、紅葉。わらびを折り取る。
木の実を拾い、一つは仏にお供え、一つは家へのみやげ。

静かな夜、窓から差し込む月の光に旧友・故人を懐かしむ。

山の中の景色は、四季折々に応じて尽きない。

静穏であることを望みとし、不安がないのを楽しみとする。

たまに、都に出て、自分自身が乞食のようになっていることを恥ずかしいと思うけども、帰って一間だけの庵にいるときは、他人が俗世間の煩わしいことに心を向けていることを気の毒に思う。

魚は水に飽きることはない。
鳥は林を願う。

私は、姿は僧であっても、心は煩悩に染まっている。迷った心が窮(きわ)まって自分を狂わせているのか。自問しても分からない。南無阿弥陀仏と二、三回言って、考えるのをやめてしまった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本史
感想投稿日 : 2021年6月17日
読了日 : 2021年6月17日
本棚登録日 : 2021年6月17日

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