ヨーロッパの個人主義: 人は自由という思想に耐えられるか (講談社現代新書 176)

著者 :
  • 講談社 (1969年1月1日発売)
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解放や自由だけを「個人」のあり方と考えてしまうと、権威の存在を前提としなければ「個人」は成り立たないことになる。解放だけを求め続けると、些細な束縛にも堪えられなくなり、束縛と付き合いながら生きていくという精神の衛生学に習熟できなくなる。不満だけが澱(おり)のように溜まり、きっかけを見つけると不合理な激情となって暴発する。p.9

秩序の崩壊・権威の喪失により、人々は信仰のよるべを失った。人々は目前に開かれた自由に狂喜し、ユートピアの夢想に浸る。しかしだれも自由の重荷に容易に耐えることはできない。p.197

無制限の自由は不自由につながる。自由があり余って不自由に陥れば、より完全な自由を求めて自由を捨てようとする。精神的なアナーキーと全体主義は一つの事柄の二面である。自由の結果は自由の放棄であり、ある暴力的な秩序や観念への完全な自己投入に他ならない。p.198

論争は和解を目指すものではなく、対話は馴れ合いに終わってはいけない。相互の根源的な矛盾から目を逸らしてはいけない。矛盾に耐えて、矛盾をそのまま引き受ける。その上で現実を調停しなければならない。話しても絶対に分かり合えない二つの精神の激突からしか対話は生まれない。p.216

無数の思想に取り囲まれて、判断に迷いが生じ、選択できず、行動できず、どの思想ももっともらしく、どれも正しく、どれかに偏することを嫌い、ただひたすら客観的で公正であろうとする。寛容と公平といういかにも知識人にふさわしい美徳の表看板は、単に信じる力を失っているだけである。p.217

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 読みもの(社会学・政治学)
感想投稿日 : 2024年4月11日
読了日 : 2024年4月11日
本棚登録日 : 2023年2月11日

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