この人の閾 (新潮文庫 ほ 11-2)

  • 新潮社 (1998年7月1日発売)
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本棚登録 : 525
感想 : 52
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兎角ものを考え続ける主人公たちの心情を執拗に追い描き、風景や時間経過と共に「生きていく」ことを捉えた作品が並ぶ。表題作は第113回芥川賞受賞作。しかしどの作品にもドラマチックと呼べる劇的な展開は見当たらない、最後に収録の『夢のあと』の結末に幼稚園で出くわす状況や、『東京画』で「煙草屋の二階の物干しにじいさんとばあさんが椅子か何かに腰掛けて裸でいた」ことくらいか、静かな佳作たちだ。ただ日常というものはそういうことが起きないから「日常」なのだし、その常なる生活状況に豊かさや深みがあることを著者が丁寧に紡ぐ作品は、評するならば尊い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: I HAVE
感想投稿日 : 2021年8月1日
読了日 : 2021年7月31日
本棚登録日 : 2021年8月1日

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