兎角ものを考え続ける主人公たちの心情を執拗に追い描き、風景や時間経過と共に「生きていく」ことを捉えた作品が並ぶ。表題作は第113回芥川賞受賞作。しかしどの作品にもドラマチックと呼べる劇的な展開は見当たらない、最後に収録の『夢のあと』の結末に幼稚園で出くわす状況や、『東京画』で「煙草屋の二階の物干しにじいさんとばあさんが椅子か何かに腰掛けて裸でいた」ことくらいか、静かな佳作たちだ。ただ日常というものはそういうことが起きないから「日常」なのだし、その常なる生活状況に豊かさや深みがあることを著者が丁寧に紡ぐ作品は、評するならば尊い。
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- 感想投稿日 : 2021年8月1日
- 読了日 : 2021年7月31日
- 本棚登録日 : 2021年8月1日
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