一時期、日本でも話題となった、村上ファンド、ローンスター、サーベラス、リップルウッドなど、投資ファンド(VCファンド、事業再生ファンド、バイアウトファンド)などについて、素人にもわかりやすく説明した本。
日本では90年代後半から、VCファンドとして、ジャフコ・エヌ・アイ・エフベンチャーズなどが活躍していた。
その後、企業の選択と集中により、MBOなどの加速したため、バイアウトファンドが活性化。最近でも、ワールドや、ポッカなどで行われている。事業再生を手掛ける場合も多くその境界はあまりない。
日本では、80年代から投資組合が組織されたが、組合自身が商法上、出資者が出資額を超えた無限責任を負わされるため、ファンドとして拡大しなかった。この場合、主に年金の運用を担当とする、機関投資家はリスクを恐れ、資金を投じない。
また、投資ファンドが法人化されてしまうと、構成員の所得税のほか、法人税が課されてしまう。
その後の法改正や、2重課税をなくするためのパススルー課税の登場によって、現在では以下の3つの形態に発展していくことになる。
任意組合
全員が無限連帯責任、事業目的に制限なし。パススルー課税。登記が不要。ごく少数のプロの投資家がファンドを構成するのに適している。ジェネラルパートナー(GP)と呼ばれる運営者が自ら出資する場合が多く、その信用力や営業力がないといけない。世界的に有名なファンドであるカーライルもこれに属する。
日本ではニッシン・ネットエイジ学生起業家ファンドなどがある。
匿名組合
有限責任、営業に限定。ペイスルー課税。登記が不要。匿名組合員である出資者(リミティッドパートナー=LP)は基本的にGPの運営に、基本的に口を出さなため、GPが経営ノウハウをもっていて、LPは投資利回り以外関心がないケースに利用される。
投資事業有限責任組合
無限責任組合員以外は有限責任、パススルー課税。登記が必要。
GPもLPもプロ投資家であることが多い。GPがLPの資金力、信用力を借りたい時に利用される。
ファンドの運営者は一般的に収入として、運営資金の約2.5%と、成功報酬として利益に対して20%を毎年受け取る。
ただし、最終的な利益が出なかった時に、その成功報酬がを出資者に返還するクローバック契約や、また、キーとなる運営者が運営に必ず関与するための「キー・マン」条項、途中から他の出資者が参加できない「クローズドファンド」など、出資者のリスクを軽減するための方策もある。
日本では、決して良いイメージを持っていないファンドですが、経済の活性化には必要不可欠であり、本書はその事業形態を一般の人にわかりやすく説明した良書ではないでしょうか。
- 感想投稿日 : 2014年6月2日
- 読了日 : 2010年6月6日
- 本棚登録日 : 2014年6月2日
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