子どものうそ、大人の皮肉――ことばのオモテとウラがわかるには (そうだったんだ!日本語)

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000286244

作品紹介・あらすじ

3歳ともなると子どもは一見会話らしいやりとりができる。だが、ことばで自分の意図をきちんと伝え、ことばから相手の意図を正しく理解できるようになるのは、まだ何年も先のこと。それは大人にとっても簡単ではなく誰でも失敗したことがあるはずだ。発達途上の子どものことばを手がかりに伝わる理由・伝わらない理由を探る。

感想・レビュー・書評

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  • コミュ力というものが大事であると言われているが、その本質がどこにあるかが本当に理解している人は私も含めてどれだけいるのだろう。
    この本を読み終えて最初に思ったことである。
    本書は母子の会話例や実験などを通して、言葉によるコミュニケーションの本質がどこにあるのかを示している。
    もちろん言葉の意味をきちんと捉えることも大事であるが、相手の意図や背景も推測する力がなければコミュニケーションは成り立たないのだなと思ったし、話し相手によっては誤解のない表現をすることも必要になってくる。
    話が噛み合わないのを人のせいにしてしまうよりかは、自分自身が話す能力を磨き鍛えていきたいものである。

  • 2013.8.26市立図書館
    前半の母子の会話例や心理実験をとおしてこどものコミュニケーション能力がどのように身についていくかが興味深かった。9歳ぐらいまでは皮肉が通じない、とわかっていれば、こどもへのものの言い方にもっと工夫ができたかも、と反省すること多し。
    次に発達障害のある人の手記や記録から、私たちがつい当然と思っている婉曲・比喩表現も子どもや語用障害者にとっては理解困難であることがわかり、後半は発話のオモテとウラを理解するためにどういう能力が求められるか、聞き手と話し手にはそれぞれどういう傾向・癖があるかを探り、誤解の少ないコミュニケーションをするためのヒントをまとめる。

    思えば、幼児と話すときには母親ならずとも言葉も話し方もある程度はコントロールするものだし、日本語初級の外国人に対しても、たいていのひとは語彙や文法をコントロールして話そうという配慮がある(日本語教師と違って一般人だと見当違いのコントロールであることも少なくはなく、それはまた問題であるけど)。
    ところが相手が小学生になって一見いちにんまえに話せるようになると、もうそういう「相手への配慮」を忘れてしまう。実際は年齢や生活・文化による経験の差、思考の癖、文脈のギャップなどがあるのに、自分と同じように話が通じると思い込んでしまう。そういった相手の聞く力への過信や油断から思わぬすれ違いや失敗が生まれがちなのであり、自分の気持を誤りなく伝えたいと思うなら、自分の話す内容を意識的にコントロールしたり、コミュニケーション技術を磨いたりする余地があるのだということになる。
    聞き手としての力は、それなりの発達段階を経て自然に伸び、それほどの個人差はない一方で、話し手としての力には得手不得手の個人差が大きく、別の面から見れば学習・訓練がものをいう領域ともいえる、というまとめからは「伝わらないのを相手のせいにせずに自分の発信力を磨こう」というメッセージを感じた。

    後半はともかく、前半の具体的な事例を読むだけでも、子育て中の親やこどもや発達障害に関わる仕事に携わる人には得るものが多いはず。

  • 完璧なコミュニケーションを取れる人間などいないと思えば少しは気が楽…かな?会話って難しい。

  • 発達障害の人とのコミュニケーションを含めて、子どもも大人もどれくらいの人が本当に相手を「分かろう」としているのだろうと考えさせられた。
    マジョリティからするとマイノリティが「おかしい人」となる訳だけれど、マイノリティからするとただの多数決で決まっている事柄にどうして従わないといけないのか本当に不思議だという感覚なのだろうな。
    「常識」とか「普通」とか「当たり前」とかはあくまで「自分にとって都合がいい」というだけのことなので、これらの言葉を使わないように気を付けていきたい。

    「この程度の話が通じないバカ」は発言した相手の発話能力が低いということも覚えておきたい。

    あと、個人的には冗談と皮肉の違いが判らなくて、わざわざ皮肉を言う必要ってどんな場面のことなんだろうと想像に困った。
    皮肉に気付かない人を発達障害呼ばわりするのではなく、相手が理解できる言葉をかかられる人間に私はなりたい。

  • 子供の発達段階での相手に意図の読み取り具合の違いや語用障害者での相手の意図の読み取り具合など興味深い話が多い。会話では効率化を無意識で行ってしまうため、相手の文脈を把握しそこなうことがある。また聞き手の能力を必要以上に期待してしまうことがある。このような知識をもとに、コミュニケーションは100%できることはない、と知って、相手に負担をかけない会話をすることを心かけることが大事なのだろう。

  • 2017.4 市立図書館

    私には、少しお堅くて、読み終えるのに時間かかった。
    でも、内容はわりと分かりやすくて、なるほどなーと。

    親しい間柄の相手ほど、聞き手の理解力を過大評価してしまう。


    皮肉などの婉曲表現を理解できるのは、9才ころから。 

    小学生の息子相手に理解力を求めるよりも、自分の表現力を鍛える方が先ってことだなと反省。
    わかりやすく、親切に。

  • 子供大人関係なく、言葉で物事を正確に表現するのは難しいという事。

  • 一桁の年代の子どもが、どんな傾向を持って言葉のウラを解釈しているか、またどのように発達を遂げるかをも分かる本。

    私は、未就園の子ども達に遊んでもらう機会に恵まれている。
    その時の好きな瞬間の1つが、3歳ぐらいの子どもと、科学絵本やらに描かれたものを指さしながら、与太話をさも分かっている風に、大人がやるみたいに会話をする事だ。
    持てる能力を総動員して、自分の頭の中のものと描かれたものとを結び付けようとする姿は、「誠実」そのものだ。

    「あとがき」にある著者のお願いのように、“それぞれのコミュニティで接する子どもたちと質の高い会話を楽し”む1人になりたいと、改めて思った。

  • ほとんどの場合、言葉の額面通りの意味と、話し手が意図している意味はずれている。だが、通常は文脈からずれを埋めることができるため、コミュニケーションは問題なく成立する。だが、アスペルガーの人はそれが苦手。例えば、子どもが先生に「マットを(ロッカーから)出して、お昼寝をしましょうね、といったとき、アスペルガーの子どもは昼寝をしなかった。それは、ロッカーに入っているのはマットではなく、ラグ(毛布)だったからだった。
    認知効果: 聞き手がすでに持っていた知識と新しく得られた情報が結びつき、聞き手の知識が改善されるときに生じる。聞き手に「わかった」という感覚を生じさせる。
    認知効果が得られると、認知システムは発話の解釈を止める。耳を傾けるのは投資で、報酬は認知効果。情報処理のコストのわりに認知効果が少ないと損した気分になる。人間の認知システムは関連性を最大化するような仕方で作動する。
    世間話や挨拶の認知効果は、人間関係の確認。世間話や挨拶を交わすことで、人間関係が良好であることを確認している。

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著者プロフィール

松井智子(まついともこ)
東京学芸大学教授.1987年早稲田大学教育学部英語英文学科卒業.
1988年ロンドン大学ユニバーシティカレッジ文学部英文科修士課程修了,
1995年同大学文学部言語学科博士課程修了(言語学博士).専門は認知科学,語用論.
著書に『子どものうそ、大人の皮肉-ことはのオモテとウラがわかるには』(岩波書店,2013)ほか.

「2013年 『コミュニケーションの起源を探る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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