君の膵臓をたべたい

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本棚登録 : 8507
レビュー : 1264
著者 :
もるがなさん 現代劇   読み終わった 

文章は書き慣れた感じでこなれてはいるものの、細部はやや説明口調でお世辞にも上手い文章ではなかった。奇抜なタイトルではあるが、奇抜なのはタイトルだけで中身はありがちな難病モノ。少し一般から浮いている天真爛漫な変わり者の少女と、少しひねくれている少年が、独特な少女の感性に振り回されながらも変わっていくという目新しさのない物語で、やはりシチュエーション先行で描かれた印象が強い。いうなれば「難病の美少女モノ」という手垢のついたテンプレートに則っているだけで物語としての深みはまるでない。クライマックスで、彼女は病気とは違う不幸な結末を迎えるわけだが、それが表しているのはただの「理不尽さ」であり、そこから死に対して何かしらの教訓は得られるものではないと思う。特別な関係での日常に憧れる人間にとって難病と知っている人間同士という共犯関係は都合がいいのであろうが。主人公とヒロインの関係ばかりで、置いてけぼりにされた親友が少し可愛そうだと思った。一応ラストで救済はあるものの、死後でなければ物語に関われないというのは中々に残酷な話である。その「閉じた」関係と世界観は確かに青春モノの王道ではあるのだが、他者との関わりを大事にするのが物語の結論である以上、主人公とヒロイン以外の他者との関係性の異常なまでの薄さはやはり失敗だったように思う。まあこの手の話にしてはウェットの配分は絶妙であり、重苦しくなり過ぎず爽やかにまとめあげた筆致は賞賛に値する。

レビュー投稿日
2019年5月28日
読了日
2015年8月13日
本棚登録日
2019年5月28日
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