DDTファンとしてはどうしても「前作」とも言える『俺たち文化系プロレスDDT』と比較してしまう。『俺たち』の刊行は2008年。それから10年が経ち、DDTは毎年のように両国国技館で興行を打てる業界2位グループの団体まで成長した。『俺たち』との重複はどれくらいあるのかと不安に思いつつ読んだが、ほとんどが新規に書き起こされた「現在のDDT」の話だった。
『俺たち』でも語られていたが、現代プロレスとはキャラクタービジネスであるという主張は変わっていない。しかし厳しい目線で見れば、ケニーの退団後はディーノやササダンゴの次に現在のDDTを引っ張る「らしい」キャラクターは生まれていない。各レスラー、非常にキャラは立っているがDDTファンの裾野を広げていけるほどのクリエイティビティがあるレスラーは残念だがまだ出てきていないのが現状だ。立場上言いにくいのかもしれないが、そこに対する危機感や対策(ひらがなまっするはまさに「対策」だっただろう)が書かれていなかったのは消化不良感。
『俺たち』との差分としては東京女子プロレスの発展も見逃せないだろう。最近では白川、万喜の参戦終了があったがTDC大会を成功させるなど勢いが上がっており、山下、坂崎、中島、発刊当時はフリーだった瑞希をはじめとしたトップ層はどこに出しても恥ずかしくないレベルまでプロレスのレベルが上がっている。
東女についてはそれだけで一冊書いてほしいところではあるが、内容が非常に面白かった。全女やジャパン女子の系譜にない団体だからこそ書ける内輪の不条理が書かれていると、なるほど東女は鎖国を敷いているのだなと感じるし、レジェンドでは珍しく東女のビッグマッチによく呼ばれるアジャ様は理不尽を若手にやらないから呼ばれるのかもしれないとも思った。東女を統括しているのがNEOの出身である甲田哲也でなければならない理由もよくわかったし、全女に始まる女子プロレス史を他の本で得ていると対比としての東女が輝いて感じる。
DDTファンが読めば高木大社長の考えがわかるし、プロレスに興味のない人が読んでも「老舗のいる業界でベンチャーがどう戦うか」という視点で楽しめる。
- 感想投稿日 : 2020年11月21日
- 読了日 : 2020年11月21日
- 本棚登録日 : 2020年11月21日
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