アフリカ文学。死んでしまった専属のやし酒造り名人。彼を連れ戻すべく「死者の町」まで旅する主人公(やし酒飲み)の神話的冒険譚。死神やら頭蓋骨やらと対峙したり妻を得たり。けっこうひどい目に遭いながらも、ときには良い待遇の町で長逗留して過ごすなど、アフリカ文化の知識がない私には荒唐無稽な展開に思えたが、解説を読むと、隠された背景を知らず読みとばした部分に目が向けられ、作品の奥深さに触れることができた。

2021年9月22日

ジョージ・オーウェルの随筆集。「Ⅰ食事・住まい・スポーツ・自然」完璧な紅茶の淹れ方についての議論はつきなさそう。ガラクタ屋の雰囲気やスクラップスクリーンに妙な魅力を感じる。「Ⅱジュラ島便り」この章は個人に宛てた書簡が中心なので、当時の生活風景や人となりが伝わってきて好き。「Ⅲユーモア・書物・書くこと」書物対タバコ……現代の貨幣価値で日本円に換算してみたい。自然や庶民への愛情を感じる一冊だった。

2021年9月19日

読書状況 読み終わった [2021年9月19日]
カテゴリ 2021年

会社員時代の話、子供時代の話、明らかに妄想とわかる話、ちょっと判断に迷う話など色々。軽い妄想癖で済むんだろうか。類が友を呼んでいるかのような知人の話がまたおかしく。日本兵の行軍やら夜中三時の訪問客やらは一歩間違うとホラーだ。ともあれ、ロシア民謡『一週間』に対する気持ちはよくわかる。私も同じようなこと思った。とくにお風呂のくだり。そろそろ岸本さんが訳した積読本を読む頃合いか……と意識しつつ読了。

2021年9月19日

読書状況 読み終わった [2021年9月19日]
カテゴリ 2021年

大人の絵本的小説。“どうでもええ”の存在に何を思うのか。見た目は上品な老紳士の神さまと自宅ではお父さんな“僕”との交流を通して、とかく人間中心主義で世の中を見てしまいがちなことに複雑な心境を抱く。他の動植物から見たら人間こそ「どうでもいい存在」になるだろうし、どこに立場を置くかで答えは変わってくるし、考え出したらキリがない。ぐるぐるしながらも、“事務ゾウ”の存在に和んだ。小型犬サイズ、いいなぁ。

2021年9月13日

猫の一人称小説は、猫がちゃんと猫っぽくあることに面白さが左右される。その点で、野良猫らしいドライでシビアな考え方、観察による冷静なツッコミ、警戒心と好奇心の絶妙なバランス、自分ファーストだけど敵でない相手にはそこそこ寛容な態度、揺れ動くものに反応する習性、恋愛観等々、ちゃんと猫らしさが表現されていて笑えた。ちょっとした厄介事やすれ違いは起こっているが、猫のほうも人間のほうも幸せそうで何より。

2021年9月12日

連作短編。戒名の意味や付け方、寺の運営、パラオ諸島の戦いなど、軽めなふりして意外と勉強になった。外場くん、塩対応しつつも助けてあげるのね。金満寺の次男・春馬は、周りからバカ(慕何)呼ばわりされているが、私にはそんな風に見えない。理解力あるし、なにより心の回復力が高い。のほほんとしながら強かに生きて行きそう。戦争の話に焦点が当てられた「いまだ冬を見ず」も、春馬の性格が幸いして暗くなりすぎず読了。

2021年9月10日

読書状況 読み終わった [2021年9月10日]
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昭和の新宿を舞台にした連作短編。元神主の探偵・櫂と、幼馴染で大家で建築会社社長な助手役・慎吾。神主から探偵に転職というのは珍しいと思ったが、最後まで読むと表題の意味も含めて諸々納得。「竜の雨降る探偵社」間違って届く郵便物の謎。「沈澄池のほとり」友の死を悼む女性の真意と消えた手帳の謎。「好条件の求人」奇妙にして大胆な手口。「月下の氷湖」理屈じゃないんだろうな。少しは慎吾の心も軽くなればいいけど。

2021年9月9日

読書状況 読み終わった [2021年9月9日]
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タイトル通りのスパイが奮闘する長編ナンセンス小説。ふざけていながら、どこか哲学的でおもしろい。73歳の新人スパイ・ルーキー。コードネームがニックネーム化し、成り行きでターゲットと仲良くなる筋金入りの残念さ。そんな彼の一人称なので、何もかもが心許なく疑わしい。先が読めないまま移民や人種差別などの社会的テーマに翻弄されつつ、最後はみんな収まるところに収まり、任務の真相が判明するまでを楽しんだ。

2021年9月7日

読書状況 読み終わった [2021年9月7日]
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世間を囲う見えない境界線の内側になんとか留まる伊集院さんと、潔く外側に出て行って内側を冷静に見つめる養老先生の対談本。一方は理論武装し、他方は自然回帰する。ふたりのズレに対する向き合い方や考え方がおもしろい。幽霊は脳の中にならいるという話もさることながら、思いつめたら猫を見るというのは個人的に大賛成である。先のことをいろいろ考えすぎて煮詰まったとき、猫を見ていると肩の力が抜けて冷静になれる。

2021年9月6日

読書状況 読み終わった [2021年9月6日]
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装幀から物語が生まれる。架空のレーベルから刊行された架空の作家たちによるショートショート全28編。何が凄いといって、各作家のプロフィールや各種レーベルが細かく作り込まれ、一冊一冊が実在して本屋の棚に並んでいるのではないかと思わせてくれたところ。短いながら綺麗にまとまっている作品もあれば、長編のプロローグ的なものもあり、どれか本当に長編作品として世に出ないものかと願ってしまう。とても好みな作品集。

2021年9月4日

短編集。全体的にナンセンスという言葉が思い浮かぶ。とくに表題作。もはやアトラクション。コンペのようでもある。いずれにせよ乗り合わせたくはない。「二階扉をつけてください」一階に設置できるよう改良すべきではないのか。「雨降る夜に」ホッとする話。「動物園」SFとファンタジーの中間にある仕事小説風。綺麗なだけなら写真で十分。息遣いを感じられてこそだと思うので、私が園長なら柚月さんにお願いしたい。他三編。

2021年9月3日

読書状況 読み終わった [2021年9月3日]
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シリーズ最終巻。「那由多と目競の思惑」過労死予備軍な雑貨屋……。悪くいえばワンマン経営で、チーム体制もノウハウもない状態なのか。しばらくはよくても、現状維持だと町の寿命に不安を覚える。「那由多と混沌の主」かつてないピンチ発生。「那由多と華舞鬼町のみんな」玉さんの説得力。那由多をはじめ、全員の協力体制でまさに大団円だった。「那由多と境界の町のひとびと」幽落町の仲間が勢ぞろい。立派でも犬は犬なのね。

2021年8月29日

シリーズ6作目。「那由多と貧乏神」不憫な……。「那由多と臨海線」思った以上に手ごわい能力で、福の神への道のりは長そう。本人の意思に反して発動しているところがまた気の毒だ。いい奴ならなおさら。那由多ともども応援したくなる貧乏神。「那由多と海の記憶」東京タワーに浮かぶ海獣。心霊写真と呼ぶには幻想的な一枚。「狭間堂と休日」東京タワーを散歩。束の間の休息みたいだが、どことなく不安感がつきまとっている。

2021年8月29日

シリーズ5作目。「那由多と送り拍子木」お姉ちゃんが無事でよかったけど、代償にカメラが……。「那由多と消える住民」そういう現象だから仕方ないかもしれないが、悪意なく弱い部分を突いてくるって嫌な感じだ。「那由多とふたりの絆」異能カメラなしでも心を動かせている。「狭間堂とかけがえのない友人」絆が深まって安心した。でも実家より円さんが優先されているように見えるので、親側に立つと少々寂しいかもしれない。

2021年8月28日

シリーズ4作目。「那由多と妖しい語り部」厄介そうなのが出てきた。「那由多と姥ヶ池の怪談」悲劇怪談のループ。那由多とポン助の組み合わせは、気の置けない友達同士という感じがして好きだ。「那由多と亡者の記憶」親切な紙芝居屋さん。狭間堂さんと円さんの関係が垣間見える回。私は身長のことよりも、家族になんと説明して旅に出たかのほうが気になるよ。「百代円記者の怪奇事件簿」名前をつけた時点で特別ではないのか。

2021年8月28日

シリーズ番外編。「であいのはなし」黒猫と水脈さんの出会い。「だれかのために」猫目さんと忍さんと白尾さん。忍さんがまだ住人の頃っぽい。とりあえず白尾さんに胃薬を差し出したくなった。「つまったもの」忍さんと都築さんと山奥の廃村。アヤカシを脇に添えたクローズド・サークルミステリーだと思う。「かぶきちょうへ」猫目さんも円さんも、唯一無二の存在に固執しているけど、方向性が違うから分かり合えるはずはなく。

2021年8月27日

シリーズ3作目。「那由多と利根川の友だち」河童のお姉さんは、もうちょっと危機意識を持ったほうが……。「那由多と狭間堂の師」コミケという名の戦場帰りに水難被害。海といえば朱詩さん。狭間堂さんは同人誌と聞いて『白樺』とか連想しそうな人だから、同行を阻止したのは賢明な判断かと。「那由多と送り火」結果的に豪華な燈篭流し。「狭間堂と海座頭の……」相変わらずだが、親戚のおじさんにひとり欲しいタイプでもある。

2021年8月27日

シリーズ2作目。「那由多と旧き車両」ハナさんとお出かけ。たまに昭和の電車だということを忘れそうになる。「那由多と桜の森」坂口安吾の世界。元ネタと違って、妖艶ながらも優しい結末になっていた。「那由多と風鈴の街」風鈴が結ぶ縁。友だちというのは自然の成り行きでそうなるもので、無理して作るものでもないような気がする。「狭間堂と目競の……」円さんと話している時の狭間堂さんは、幽落町時代の彼っぽくて安心した。

2021年8月26日

シリーズ1作目。「那由多と華舞鬼町」カワウソにカメラを盗まれる大学生。ほのぼのした雰囲気の隣町と比べて、華舞鬼町はちょっと妖しい華やぎを感じる。「那由多と十二階」江戸川乱歩の世界観。「那由多と祖父のカメラ」ポラロイドカメラという呼称が懐かしい。私もインスタントカメラを恋しく思う時がある。「狭間堂と隣町の……」最初のピーナッツ推しから、そんな感じはしていた。黒猫は子供のカワウソ相手でもブレないな。

2021年8月25日

シリーズ最終巻。「おもかげをさがして」彼方、本当に頼もしくなったね。「うそにしたいこと」ハナさんに和むのも束の間、不穏な展開に……。「ゆうらくちょうにて」水脈さん不在で挑む幽落町の危機。どうなることかと思ったよ。「あなのむこうに」旅? 華舞鬼町シリーズへのプロローグのような感じがした。あとがきを読んで、都築さん登場から最終にかけて抱いた印象に納得。それぞれの歩む道が楽しみな終わり方に満足して読了。

2021年8月24日

シリーズ8作目。「りゅうのすみか」江の島へ。海のアヤカシ再び。間違いなく都築さんに嫌な顔されると思う。「なつかしいばしょ」久々の刑事さん。どれほど情状酌量の余地があっても、被害者をいなかったことにはできないものね……。「おわりのはなし」都築兄弟の問題決着。いつの間にやら彼方の成長著しく、見事な連携プレーを披露。苦しみから解放されてよかった。「みちのさき」狸兄弟の名前と名付け親が判明。後味よい締め。

2021年8月23日

シリーズ7作目。「あめのひに」瀬戸物の付喪神。欠けても修復して使いたくなる一品に出会えたら素敵だと思う。「いなずまのこども」ナイスキャッチ。彼方、わりと運動神経いいよね。普段は緩衝材のような存在だけど、たまに行動が大胆で目が離せない。最近、都築さんのせいで犬属性を強めているような気もする。「もどるものたち」松島観光。海のアヤカシ。ちょっとウルッときた。「うみからきたもの」深海カフェとのコラボ。

2021年8月22日

シリーズ6作目。「せめてひとめだけ」バイクで鮮やかに拉致される彼方。アヤカシがほのぼのしている分、都築さんが恐怖を担当しているのか。怖いの意味が違うけど。黒猫の彼方に対する認識に笑った。「ぼくのふるさと」とうとう千葉へ。老舗の高級な羊羹ほど、一切れ二切れで満足できるように作られていると思うのだが……。「そらをおよぐ」鯉のぼりの話。「せおったもの」予想外の組み合わせだったが、意外と相性よさそう。

2021年8月21日

シリーズ5作目。「むこうぎしへ」死後ではあるが、母娘が再会できてよかった。「おにやらい」節分と鬼の話。忍さんは良い意味で中身が外見を裏切ってくる……。「ぼくのいばしょは」蘇芳さんの正体、なんとなくそんな気はしていたが、親切心が裏目に出て、間違ったほうへ導いてしまう親心のようなものを感じた。とはいえ、浮世に戻る問題が一件落着して一安心。「まつりばやし」金魚と射的。紙芝居の絵といい、蘇芳さんは器用だ。

2021年8月21日

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