小倉昌男 祈りと経営: ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの

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  • 小学館 (2016年1月25日発売)
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ヤマト運輸の元会長で、宅急便の父と言われた小倉昌男の評伝。

宅急便を普及させるために、様々な規制をめぐり行政と闘った剛腕経営者、というのは有名な話だが本作には、引退後に莫大な私財を投じて福祉財産を設立した事、敬虔なカトリック教徒だった事、自身の家庭問題で悩んでいた事など、意外な素顔が描かれている。

ヤマト運輸が宅急便を開始した1970年代という時代は、日本中が高度成長の真っ只中で、小倉氏に限らず家庭を顧みず仕事に勤しむ父親は多かったのだと思う。そして本来であれば休息の場である家庭が、心に病を抱えた妻と娘の修羅場であった事が、小倉氏をより一層仕事に没頭させたのかもしれない。

経営者としては類稀なる才覚を発揮した小倉氏が、後年福祉の世界に進んだ事や、周囲の心配を押し切って、アメリカに住む娘の家で最期の時を過ごしたのも、小倉氏の家族に対する贖罪の気持ちであり、神のお召しだったのだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 伝記
感想投稿日 : 2018年4月30日
読了日 : 2018年4月30日
本棚登録日 : 2017年10月9日

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