ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

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本棚登録 : 195
レビュー : 26
electriccatさん 物語   読み終わった 

「お偉い将校はんは経歴が傷つかんことだけ考えとって、評価すべき所を見とらん。兵士は顎で使われてよろこんどる」

 作者は幼少期から日本のオタク文化に親しんできたということで、「日本らしさ」というものをよく理解している。
 「大日本帝国がアメリカに原爆を投下し、第二次世界大戦に勝利した世界」を舞台にした改変歴史SF(と呼ぶらしい)である。私はSFの良い読者ではないが数少ないSF読書履歴からするとこの手のディストピアものが比較的好物なのだろう。思いつくのは大原まり子の「ハイブリッド・チャイルド」である(Webで検索すると内田春菊の同名漫画がよくヒットするがおそらく無関係)。科学は進歩しているが人心は荒廃し、その中で懸命に生きる姿に心惹かれるものがあるのかもしれない。
 本書も舞台設定は1988年であるが、技術は現実よりも進歩しているように見える。だが精神性はむしろ退化というか、「大日本帝国」から変わっていないようにも見える。たぶん作者の皮肉か何かだろうが、確かに敗戦という大きな出来事があったからこそ「大日本帝国的なもの」が否定されたわけで、もしそれがない、むしろ強化された世界と考えると、本書の舞台である北米大陸がこの有様であるとすれば、日本本土はどのような状況なのかがむしろ気になる。
 ゲームのプロが存在し、観客にプレイを見せるという娯楽が存在しているあたりは非常にアメリカ的でもある。

 主人公の一人(言ってもよいだろう)、特別高等警察の槻野昭子は天皇に絶対の忠誠を誓うガチガチの憲兵キャラで、不穏分子への拷問尋問よろこんで! みたいな感じだったのが様々な思惑に迷いつつも忠義だけは維持しようとしてかなり酷い目に遭うというあたりにカタルシスを覚える向きもあるのかもしれない。ビジュアルが表紙と口絵に巨大ロボのイラストがあるだけで人物が描かれていないため、勝手に軍服姿のあきつ丸を想定していて、それがあんな目やこんな目(ネタバレ回避)に遭うのでこちらの精神的にもなかなかきついものがあった
。ボーイフレンドは正直どうでもよろしい。

 二段組で、ページ数の割りにボリューム感のある一冊。
 余談であるが本文中では「ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン」が「USJ」と表記されるので、どうしてもユニバーサルスタジオジャパンが脳裏をよぎる。

レビュー投稿日
2017年5月24日
読了日
2017年5月24日
本棚登録日
2017年5月24日
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