第1・2章ではいわゆるゴーン事件を著者が社長の立場からの経験と考察が語られる。
日産側のクーデターと言われた事件で、日産の社内不正調査から明らかになったわけだが、当時社内でゴーンの不正のうわさが囁かれている渦中で社長が知らないという言い訳は苦しい。
更に本人が不正報酬事件で辞任することになったことも全く知らなかったというのは何らかのエビデンスか説得力ある事情がなければ無理だ。
それでも自分に非がないという苦しい抗弁を除き、前代未聞のスキャンダルに襲われた大企業の内側を垣間見れたことは興味深い。
第3~8章までは非主流派などと防御線を張りながら、日本の大企業が国際化していく過程での内なる国際化の難しさと自らの成功談を語る。
ただ当時の日産において著者のライバルだった古賀氏らの動向が一切ないのは不自然。
ましてルノーとの資本協力までの経緯がすっぽり抜けている。
本作は当事者の証言として歴史的価値は認めるが、ハルバースタムの「覇者の奢り」のような大局観と公平な感覚には程遠い。
出来ればハルバースタムのような客観的かつ大局的視点からの本が望まれる。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ノンフィクション(ビジネス)
- 感想投稿日 : 2024年11月10日
- 読了日 : 2024年11月10日
- 本棚登録日 : 2024年10月27日
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