神聖ローマ帝国 (講談社現代新書)

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著者 :
アカセンさん  未設定  読み終わった 

なぜ"神聖ローマ帝国"であるのか。長い歴史の渦の中でその意味は大きく揺さぶられ、教科書ではその名称の意味に触れられることは少ないが、これを中心に歴史を振り返ると、混迷の中世ヨーロッパを新たな一面から辿ることができる。

キリスト教会勢力と決別し、独立勢力であることを示威するために神聖を謳い、過去の栄光にあやかり、ドイツ・イタリアだけでなくフランスにまで及ぼそうとローマを名乗り、ビザンツ帝国と並び立つ版図を主張するために帝国を称した。
そこには何の科学もなく、『<a href="http://mediamarker.net/u/akasen/?asin=4061492829" target="_blank">30年戦争の歴史</a>』で見たのと同じく、時と共にうつろう各陣営の勢力争いの噴出でしかないのだが、それこそがまさしくこの時代の全てであったのだろう。
"コンクラーベ"は教皇の選出から皇帝の干渉を排するために確立し、"カノッサの屈辱"は皇帝と教会の対立の始まりでも結果でもないただの一場面。神聖と名づけたからこそ、聖地エルサレムを救うために"十字軍遠征"に行かなければならないし、"大公"の名はハプスブルク家が選定諸侯に対抗するために創りだした称号だった。
この時代の全ての言葉はただ争いのために争いから生じたものだとさえ思えてくる。
こんな同じような名前の連中が同じような地域で同じような敵を相手に延々と戦うだけの歴史から、人は一体何を学べるというのか。

近寄りすぎると個人の物語しか見えず、離れすぎると何の意味も見いだせなくなる。なるほど「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉の通り、歴史から学ぶ距離というのは賢人にしか測れないのかもしれない。

レビュー投稿日
2015年4月26日
読了日
2015年4月26日
本棚登録日
2015年4月26日
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