愛国と信仰の構造 全体主義はよみがえるのか (集英社新書)

  • 集英社 (2016年2月17日発売)
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戦前の皇室祭祀は、ほぼ全部明治維新後に定められた。
復古と言いながら、明治政府の存在理由の権威付けにすぎない。
「伝統」は、政権の統治のあり方に基づいて発明される。

革新左翼は人間が理性を使って正しく設計すれば、未来はよい方向に変革できると考える。右翼は、人間の理性だけでは、理想社会は実現できると考えず、長い歴史の中で蓄積された経験や伝統といった「人智を超えたもの」を重視するべきと考える。ありもしなかった過去のよき社会を復古させることができれば、ユートピアを実現できると。

何が無謀な戦争に向かわせ、国民の自由を奪っていったのか、しっかりと自覚できていない。ゆえに「憲法を押し付けられたせいで、日本は主体性を失ったから、憲法を改正し、明治の体制に戻れば、本当の強い日本を取り戻せる」という単純な議論が罷り通る。長州という通奏低音が響く自民党は、戦後レジームの解体などと言いながら、アメリカ追従という矛盾に満ちたことをしている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 316 政治 国家と個人・宗教・民族
感想投稿日 : 2021年11月20日
読了日 : 2021年11月20日
本棚登録日 : 2021年11月20日

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