「二つの塔」いよいよモルドールへの道に入る。
スメアゴルならし
ゴクリ登場。このところ時々原作と読み比べているのだが、瀬田/田中の訳は素晴らしいものです。自分の力不足のせいが大半ではあると思うが、英語からはどうしても翻訳版のような力強く、雄々しく悲しい雰囲気は伝わってこない。一文一文を忠実に訳しながら、意訳とは言わないまでも日本語の文体に合うように変えている。翻訳小説によくあるような違和感がまったく感じられない。
あれほど指輪物語を読むことを逡巡させていた「です、ます調」が今では心地よくなっている。
西に開く窓
ヘンネス・アンヌーンの滝の描写は素晴らしかった。ゴンドールの山々の彼方にかかる月をフロドが眺め、ピピンもまた飛蔭の背からこの月を見ていた。うーん、絵に残したくなるような描写。
映画でも滝つぼで魚を獲るゴクリのシーンは幻想的で心に残っていたが。
ファラミアの印象は映画とはまったく異なる。映画では唯の妬みというか父に認められたいと一心に願う不出来な次男という感じだったが、なにかしら深い洞察力とそれを覆う悲しみが伺える。
後でわかることであるが、ヌメノールの王家が持つ能力の血がデネソールとファラミアには流れていたのに対しボロミアには流れていなかった。それ故に戦士としての力は劣っていたが、ファラミアには人の本心を見抜く力と深く先を見通す心とがあったらしい。
キリス・ウンゴルの階段
シェロブの不気味さは小説ならではのもの。映画で何が出てくるのかと思っていたら何と蜘蛛!がっかりしていました。
恐怖は映像で表現するのは難しい(スプラッタ系は別にして)。
シェロブの作り出す暗黒はスケールが小さいとはいえウンゴリアントの子孫。シルマリルの物語で出番は少ないもののこのウンゴリアントの印象は最後まで残った。一言で言えばブラックホールです。
サムワイズ殿の決断
連続物のドラマのような終わりかた。第5巻「王の帰還(上)」の次までフロド、サムは出てこないので、つらいです。といいつつ上巻を読み始めるとたちまち話に没頭してしまうにだが。
トールキンはストーリ・テラーとしても優れた人ですね。
- 感想投稿日 : 2018年10月21日
- 読了日 : 2004年11月25日
- 本棚登録日 : 2018年10月14日
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