田房さんの『しんどい母から逃げる』が面白かったので、他の作品も読もうと手に取りました。こちらはあの田房さんのお母さんを凌駕するほどの強烈な母たちのエピソードがてんこ盛りで、唖然とするやらしみじみするやら。
振り返って我が家をみると、うちの親はいろいろ不満はあるけど毒親ってほどでもないよなあ…と他人事感満載で読んでいたら、「自分の母親もこれやってる!あれもやってた!」と気づくことがたくさんでした。子供の家にアポなしで訪れてノブにご飯を下げておく、大量の賞味期限切れの食品を送りつける、子がいい年になっても近所に「私がいないとこの子はダメでねえ」と触れ回る、勉強とガミガミ言ったかと思えば急に女は結婚よと朝令暮改…etc
やられた当時もモヤッとしましたが、それも親の愛なのだろうと無理矢理納得させていたのかもしれません。これを読んで自分の消化しきれていなかった悲しみが吹き出し、泣けるやら笑えるやら。
でも、たとえ嫌なことされたら親でも嫌っていいんだ、全力で離れていいんだと肯定してくれる田房さんの本にモヤモヤが成仏した気持ちがしました。私も田房さんと同じで、好きにはなれないけど、遠くから母親の幸せを願ってる…みたいな気持ちですね。
須らく人間って、お互いに適切な距離ってものがあるのだけれど、母親とはもともと生まれた時は胎内に同一として存在してたもの。だから、母親にとっては、子供イコール自分となりがちです。子の成長の過程で子を別の人格として認めることのできない親の悲劇ですね。
例えばうちの親に、いや、この本に出てくる母親にこの本を読んでもらったとしても「酷い親だねえ。可哀想に」と本気で思い、自分がまさか子にどう思われてるかを省みることはないだろうなと。そこが猛毒の母親たる所以。自分の言動は全て子への愛から発した善行だ、と思ってるため、それが行き過ぎて子を苦しめるとは想像もできないのだろう。
それにしても母親と娘は合わないと地獄とはよく言ったものです。私含むみなさん、苦労されてるんだなあと。母とはかつては娘だった生き物。それが母親になってまた娘に自己愛と子への執着がないまぜになった業を押し付ける。
古今東西、母親の業って強烈ですね。反面教師にします。
- 感想投稿日 : 2019年10月13日
- 読了日 : 2019年10月12日
- 本棚登録日 : 2019年10月12日
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