なぜ働いていると本が読めなくなるのか (集英社新書 1212)

  • 集英社 (2024年4月17日発売)
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 タイトルが長く問いかけ調にインパクトがあり、惹かれました。話題にもなりましたし…。これだけで自分事として考えるので、効果大ですね。かつて「自分もそうだった」し、仕事と読書の両立への著者の結論に興味があり、読んでみることにしました。

 予想を超えて、明治〜現代の時代ごとの労働と読書に関わる歴史の変遷を、詳細にわたって調査・分析していて、その情報量と緻密さに驚きました。
 ただ、紐解いた膨大な事実と解釈は置くとして、本書表題の問いへの著者の答え、実現のための社会づくりの具体は、やや理想論で薄い気がしました。

 三宅さんは現代社会において、自分に不要な(関係ない)知識(情報)を「ノイズ」とし、コスパやタイパを重視する仕事を突き詰めるが故に、ノイズを排除すべきものにしてしまっているとしています。
 もともと、世界はノイズにあふれています。読書(他者の文脈)をシャットアウトせず、ノイズこそ重要で、あえて受け入れる発想には全面賛成です。

 紙の新聞を俯瞰して眺める、書店の棚をなんとなく眺めるという行為は、新たな気付きや動機付けにつながります。ネット記事や通販のピンポイント情報収集と一線を画しますが、両方のよさが活かされる社会であってほしいと願います。

 改革が叫ばれる働き方は、個人の努力だけではどうにもならないこともあります。それでも、私たちの豊かな思考や想像力の源となるのが読書の意義だと、もっと認知されてもいいですね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2025年1月23日
読了日 : 2025年1月23日
本棚登録日 : 2025年1月23日

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