例えば、ルイヴィトンのロゴのフォントは何であるか?GODIVAは?といった質問に正確に答えられる人はほぼ皆無であろう。しかし、そうしたブランドにおいてフォントが果たしている役割は決して小さくないはずである。本書は、フォントデザイナーである著者が、その背景について解説してくれている。

マーケティングを生業としていると、必然的にグラフィックなどのアートワークについての意思決定が必要となる場面が多くある。フォントの選択は重要な要素の一つであるものの、現実的にはマーケティング戦略の事例などと異なり、あまりにも細部なだけに、体系的に語られてきていないのが現実であろう。

件のルイヴィトンは、Futuraを使用している。Macにも標準搭載されており、特別なフォントであるわけではない。しかし、さすがはヴィトン、ただそれを当たり前にLouis Vuittonと並べているのではなく、文字と文字の間を微妙に空けているのである。この微妙な空間が、ルイヴィトンというブランドの優雅さや洗練された空気感を作り出すのに貢献しているというのは過言ではないだろいう。

また、GODIVAはTrajanを使用している。Trajanは、もともと2000年前のローマ遺跡に刻まれている文字であり、伝統と格式、王道感を印象付けるフォントである。GODIVAも先のヴィトンと同様、調整を重ね、現在はTrajanの骨格はそのままにセリフ部分を削り取っている。

こうした伝統のあるブランド、現在の消費市場において常に最先端でありトレンドをリードするくらいのポジションが求められるということであろう。フォントはそれを具現化するための重要な手段なのである。

2018年10月7日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2018年10月7日]
カテゴリ マーケティング

以前、文藝春秋に掲載されていた著者による単独インタビューの記事に加筆したものを加えて出版したもの。小泉純一郎の話し口調が、〜ねぇんだよ、ひでぇこと、などの口調もそのままに記載されており、本人の人柄が垣間見えるのが面白い。文藝春秋での記事が掲載された当時は、小泉が原発反対の立場で各地で講演を精力的に行なっていたタイミングだったため、話の大半はその話題となっている。色々と、政治世界での原子力発電についての実情が語られているが、驚いたのは、民主党は、電力総連から支援を受けているので、原発反対とは言えない、という事である。

件の、加筆の部分については、著者の小泉純一郎感が記されているが、インタビューの中で、小泉は、決して他人を吊るし上げたり悪口を言ったりすることはなかったという。流石である。

2018年10月2日

読書状況 読み終わった [2018年10月2日]
カテゴリ 1

言わずと知れた経営理論の大家、ドラッカーの名著。

本書のタイトルは、ずばりマネジメントであるが経営戦略の本ではない。もちろん戦略に関する要素も多く書かれているが、本質は、そこではなく、ビジネスとは何か?、マネジメントとは何か?、リーダーとは何か?といった、経営に関する様々な要素についてての哲学を語ったものである。

経営についての哲学がなければ、いくら素晴らしい戦略を立てたとしても、見た目だけの砂上の楼閣となり、時代の変革についていけなくなって、いつか崩壊してしまう。特に前半、自らの事業はなんなのかを常に問うことについての重要性を強調している。しかし、企業の本質として、産業を問わず、その存在意義は”顧客を創造すること”であり、”イノベーションをもたらす事”であるとしている。これのみが、企業を存続させるための唯一の方法であるという事だ。

2018年9月29日

読書状況 読み終わった [2018年9月29日]
カテゴリ 1

ラグビー日本代表監督として、W杯で歴史的な3勝をあげた著者。お母さんは、日系アメリカ人だという。彼が成し遂げたチーム改革の柱は、一言で言えば意識改革だったといえよう。

<b>マインドセット</b>
まず、彼が代表監督に就任した際に、感じたのが選手のマナス思考のマインドセットだという。当時、日本は過去にW杯で20年前の1勝しか上げておらず、まず監督はW杯で勝利を上げる事を目標とした掲げたという。それに対して選手たちからは、「日本人は外国チームと違って体格が小さいから無理だ」という声が上がったという。私から言わせれば、じゃぁあなた何で日本代表でラグビーをやってんの?と言いたくなってしまう。ジョーンズは、日本人は短所にとらわれ過ぎていると指摘する。短所の裏返しは長所にもなりうる。体格が劣るのであれば俊敏性で勝ればいいのである。<b>短所にこそ、勝利や成功へのヒントが隠されている</b>、と述べている。女子サッカー、なでしこジャパンジャパンの佐々木則夫監督とも会って話をしたことがあると書中で述べられているが、サッカーでも抱えている課題は同じで、体格の差であったという。佐々木監督も、全く同じ考え方で、それを欠点としてネガティブにはとらえておらず、一つの条件に過ぎないと考えていたという。

また、友人にリサーチを依頼し、日本人の勝れている点は、3つのキーワードを導き出した。
- 信頼
- 忠誠心
- 努力

これらを活かしたチーム作りをし、それをジャパンウェイと名付けて、選手、スタッフ、メディアになんどもコミュニケーションしている。

当初から選手たちは、一生懸命練習していたという。しかし、ジョーンズの目には、この先にどうなってやろうという具体的な目標がなく、ただ一生懸命こなしているだけに映った。今よりよくなろうという意識が欠けていたのだ。

<b>日本人</b>
彼から見ると、日本人は"普通である"ことを大事にする民族であるという。 社会から疎外されない事に重きをおきながら生活していると。グループに溶け込み、そこに居場所を見つけ出す事が心地いいのだろう、と。その指摘は全くもって図星であり、期せずじて直前に読んだ「菊と刀」で論じられていた「応分の場」に重なる。

年功序列については、百害あって一利なしと一刀両断している。世界と戦う日本代表のような組織でそのような年齢や経験による上限関係を持ち込むことは一切禁止したそうだ。

また、ジョーンズは、世界を驚かせたW杯での対南アフリカ戦での勝利について振り返る中で、日本人の特性についてこう述べている。「彼らは、何かをやれと言えばやる、たとえそれが間違っているとわかっていても、やり続ける。」「よく言えば生真面目、悪く言えば融通がきかない」と。日本の現代史における、戦争などの様々な悲劇がこうした資質に由来していると思われるが、やはりジョーンズもその本質は見抜いているのであろう。ジョーンズは、日本選手に必要なのは各々が自ら考えて行動するという事であると気づいたという。

しかし、件の南アフリカ戦勝利については、ジョーンズはスタンドから引き分け狙いを指示したという。一方、現場の選手たちは


最近読んだ、青山学院陸上部を箱根駅伝4連覇に導いた原晋監督の著作にもエディージョーンズ氏について言及されていたが、本書中にも同じような事が多く書かれている。理解していないのにもかかわらず”はい”という返事をする選手が少なく無いという。やはり重要なのは、選手自身が自ら考えることができるようになる事である。優秀な指導者は、やはり行き着くところは同じなのだろう。

ジョーンズも、原監督と同様本をよく読むという。ビジネス書が多いそうだ。私もよく感じている事だが、ビジネス書に書かれている事は原則的には、おおよそ同じような事が書...

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2018年9月11日

読書状況 読み終わった [2018年9月11日]
カテゴリ 1

日本人が読むべき名著の一つだろう。仕事で米国との関わりがある人は読んでおいて損はない。

本書は、もともと太平洋戦争末期の日本の敗北が濃厚となった1944年に、日本の占領政策を立案するにあたっての参考資料として米国政府が文化人類学者の著者に依頼した調査が元となっている。その際のレポートは”Japanese Behavior Patterns = 日本人の行動パターン”と名付けられたもので、3ヶ月の短期間で作成されている。日系アメリカ人への聞き取りや、日本の新聞から、夏目漱石の小説、忠臣蔵と様々な情報を以って、日本とは、日本人とは何か、について分析されている。

文化人類学とはなかなか馴染みがないが、驚くのは日本に一度も足を踏み入れた事のない著者が、ここまで日本人の行動特性や社会性を客観的に分析出来ているということである。本書にはいくつもの事実誤認が含まれているが、それ故に本書に対する批判も多いという。しかし、実際の読後感としては、そうした事実誤認は全体の本質を見誤らせるようなものではなく、日本人論としての本書の価値を下げるようなものではないと考える。

タイトルとなっている”菊”は天皇制につていのメタファーであろう。そして刀については明確に書中でも論じられているが、日本人の自己責任の精神が象徴されている。武士の時代、自らの刀を常に研いでおき、いつでも使えるようにしておくことが武士の責任の一つであったという。それを怠ると、自然、刀には錆が生じる。本書を通じて初めて知ったが、”身から出た錆”とは、これを比喩した自己責任を意味する言葉である。

<b>義理、忠義、汚名</b>
英語に義理に相当する言葉は無いという。著者はこれまで各国の様々な文化を研究し、風変わりな道義的責務をいつくも見てきたが、日本の義理ほど異色なものは希であるという。中国では、侮辱や中傷に対して神経質になるのは、小人の特徴とされているらしい。しかし、日本人にとって侮辱は、場合によっては命を捨ててでも報復をすることが美徳となるのである。日本の義理は、忠誠という側面だけではなく復習という面からも見る事ができ、その典型は”忠臣蔵”である。(忠臣蔵は、世界的には文学作品としての評価は低いそうである。)しかし、西洋的価値観である屈辱をなめさせ罰を与えて罪の意識を自覚させる、という事については。西洋的価値観であって、日本人に対するこの分析は、対日占領政策の効果の成否は、これを自制するか否かによって左右されると提言されている。日本人は、「嘲笑」と「当然の帰結」を区別するということである。

<b>競争</b>
直接の競争を避けようとする傾向は、日本人の生活のすみずみまで浸透しており、それを避ける方法を絶えず工夫してきた。実際、競争相手がいる状態といない状態とで問題を取り組ませると、競争相手がいない状態の方がミスも少なく、スピードも上がったという。被験者が最高の成績を収めたのは、自分の記録の更新を目指した時であって、他人との優劣を比較したときではなかったという。上記のテストでは、競争相手に負けるのでは、という危惧が頭を占めてしまうことが成績に影響したとされている。日本人は、失敗すること、また人から悪く言われたり拒絶されたりする事に対して傷つきやすいのである。

例えば、高校野球などで負けたチームが身を寄せ合って鳴き声をあげる事があるが、これはアメリカ人からすると潔くない連中と見なされるという。彼らの礼儀作法では、「力の優るチームが勝った」というセリフが敗者の弁にふさわしいものとされる。負けたからといって取り乱すような人は軽蔑される。

<b>応分の場</b>
書中において最も腹落ちしたのが、「応分の場」という記述である。本書全体に通じてバックボーンとなっている論理が、日本は階層社会であり、日本人...

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2018年9月9日

かつて、箱根駅伝に出場すらできなかった青山学院を、今や無敵とも言える強豪校に押し上げた最大の功労者である原晋監督による本。

高校で駅伝の全国大会準優勝となった以外、選手として目立った活躍はなく、その後、入った大学や実業団の中国電力でもぱっとせずに、営業マンとなる。しかし、そこで営業とチームマネジメントで頭角を表し、青山学院陸上部の監督に招聘される。その過程については触れられていないが、青学にとってもギャンブルのような人選であろう。

相手は学生であるものの、彼のチームマネジメントやリーダーシップスタイルは、実社会でも大いに参考になるものであろう。とりわけ、日大アメフト部、レスリング協会、体操など、昨今のスポーツ会での相次ぐパワハラ指導問題から、これまで当たり前とされて来た絶対的指導者によるスパルタ式の指導方法については疑問符がつけられている。著者の指導スタイルはそうした問題指導と一線を画する、これからの時代にマッチした一つの新しい指針となるであろう。

著者の最大の強みは、コミュニケーション能力であろう。しかし、著者自身も就任当初はすぐに結果を出すことが出来ずに、失敗談として書中にもいくつか紹介されている。そうした意味では、失敗から学び、考える事で、自分自身も成長し、それを指導に活かす事ができることが彼の真骨頂であろう。

以下、参考となる部分

指示通りに動くチームは監督としてはやりやすいかもしれない。しかし、そのチームは監督の器以上には成長しない。

規則正しい生活や、目標管理の意義を部員が理解する前に自主性を重んじるステージに移行すると、自主性と自由を履き違えた同好会のようなチームになってしまう。

「今までこうしてきた」、「前例がない」というのは、考える事、工夫することを放棄している人が使う言葉です。

体育会流の「ハイ」という返事をする人は伸びない。何も考えていない学生が多いという。監督の顔色を伺うようになったら最悪。

まだ、青学が陸上で無名な時に、箱根駅伝に出ようと言っても、信ぴょう性は微塵もない。そんな中、見込みのある高校生に伝えたのは、「箱根駅伝の勢力図を一緒に変えよう」という事だったそうだ。

<i>〜プロ野球の野村監督が、先発にこだわる江夏を抑えに転向させるときに「野球界に革命を起こしてみないか」と言ったそうだが、原監督のこのセリフと通じるものがある。やはり出来る指導者は同じところにたどり着くということか。〜</i>

手を伸ばせば届くような簡単な目標は、人の気持ちは熱くならない。かと言って、届きそうもない目標を掲げても意味はない。爪先立ちで必死になって手を伸ばせば届きそうな半歩先の目標こそが人を動かすエネルギーになる。リアリティのない話にいくら理屈を重ねてもだめ。人の心に響かせるには、理屈と情熱がリアリティをもってバランスよく存在することが大事。

著者は、営業マン時代の経験として、頭を下げるだけの営業は長続きしない事を学んだという。また、青学の監督3年目に結果を求めるあまり記録を優先してスカウトした選手が、寮則や門限を守らずチームがまとまらなかったという。

その後は、スカウトした学生に対して、こう言う事にしているという。「私は、君を取ってやったとは思っていない。君も来てやったなどとは思わないでほしい。お互いに一つの目標に向かって努力しよう。私だけが頑張るのではない。君だけが頑張るのでもない。私の仕事は君が頑張る事を手伝う事だ。頑張らない君の首根っこをつかまえて頑張らせることはしないからね」


営業マン時代の経験は随所に生きているという。日本ハムが大谷翔平を口説き落とした決め手となった育成計画が引き合いにだされている。海のものとも山のものとも分からない企画を営業先に売り込むには会社が用意したパンフレットだけで不十...

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2018年9月8日

読書状況 読み終わった [2018年9月8日]
カテゴリ 1

プロ野球の世界は、なるだけでも大変な世界であろう。その中で、さらに一流、超一流となるには、身体能力だけに依存していてはとうてい叶わないはずである。そこに集うのは皆、腕に覚えのある強者達なのだから。

野村が、選手としても監督としても、超一流として数々の記録とともに人々の記憶に残る結果を残すことができたのは、考える事に対して常に努力を惜しまなかった事だろう。野村は多くの格言や名言を引用するのであるが、驚くのはその守備範囲だ。野球の分野はもちろんであるが、それにとどまらず、儒教、ギリシャ哲学、心理学、シェイクスピア、英語単語の語源など、その守備範囲は広範である。いかに、野村が読書家であり、知的好奇心が旺盛で、貪欲であるのかが垣間見える。選手時代の実績に加えて、これまでの経験や知識をノートにまとめていたという。ヤクルトの監督になってからは、頻繁にミーティングを開き、選手に野球のことから人生についてまで問い続けたという。

以下、そうした格言などで印象が残ったものである。
先入観は罪、固定観念は悪
言い訳は進歩の敵
君子は和して同せず、小人は同じて和せず:論語
「エディケーション」とは引き出すという意味である。押し込みではない。
イマジネーションのないところに、クリエーションは生まれない。

真面目で意識の高い選手が多かったヤクルトには、これがピタリとハマったのだろう。ID野球の申し子と言われる、古田を筆頭に、宮本、稲葉、真中、などが選手として大きく成長し、自ら状況を考え、役割を理解し、ヤクルトは90年代のセ・リーグで最強のチームとなるのである。

一方、失敗経験についても野村は語っている。阪神では、この方法は全く機能しなかったという。スター選手も多く、大阪本拠でファンとの関係もタニマチのようなものがあった阪神では、ミーティングは皆そっちのけで、その後の宴会の事ばかり気になっている様子がありありと分かったそうだ。

書中には、野村と選手との会話のやりとりが紹介されているが、彼が上手だと思える事は、まずは自分を謙虚にへりくだって言う事だ。おれは、ヘボな4番バッターだったが、とか、俺はヘボ監督だが、などと言った上で、指導をしている。あれだけの実績を残している野球界のレジェンドに、そうまで言われたら、聞かざるを得ないだろう。

やる気を出させるにはいつくかのスイッチがあるという、それを野村は7つに分類している。阪神で監督だった際、新庄は1、4、5あたりが理由だったという。このタイプは叱ってもだめで、褒めて乗せなければならない。どのポジションをやりたい、と聞いたところ、「ピッチャー」と言ったそうだ。それを受け、オープン戦で試しに投げさせたところ、自分から、「やっぱり向いていません」、と言ってきたという。しかし、これで野球の楽しさを再認識したらしい。
1. 能力の割に目標が低い
2. 単調な反復を打ち破る手段を持たない
3. 限界を感じ、妥協したり、自分の力を限定している
4. 成功の経験が少なく、挫折感に支配されている
5. 興味、好奇心を抱くきっかけがない
6. 疲労
7. 意思、自信を持てずにいる

宮本の証言もまた、当事者として野村の指導をどう捉えていたのかが分かる。「ID野球という言葉の響から、選手達ががんじがらめになっていたような印象を抱く人が多いかもしれないが野村監督は、大事なところさえ押さえれば、むしろ自由にやらせてくれる監督でした」という。「野村監督も、俺の野球はこうだ、といいますが、「こうだ」が指しているものは具体的な作戦ではなく、あくまで「方向性」であり「考え方」なのです。」

その宮本は、バッティングに目をつぶって守備がいいショート、というスカウトのレポートでドラフト二位で入団したという。本人は、並み居る天才達を尻目に、ついていくのがや...

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2018年9月6日

読書状況 読み終わった [2018年9月6日]
カテゴリ 1

読み終わっても興奮を抑えきれなかった。

伊藤智仁の選手としての魅力は、強打者をつぎつぎと打ち取る代名詞の高速スライダーだろう。そして残念ながらそれはルーイーイヤーの最初の3、4花月で終わってしまったという悲劇とその後の必死のリハビリでカムバックするというストーリーが彼の存在をさらに伝説的なものにしている。

しかし、登場してから20年、引退してからも10数年が経過しても今尚、メディアなどで取り上げられるのはどうしてだろう。上記のストーリー性以上の何かが彼にはあると思う。それは、伊藤さんの人としての魅力、人間性なのではないかと思う。

書中、筆者は色々な関係者に丹念にインタービューをし証言を得ているが、伊藤さんは先輩、後輩に関係なく周りの人たち皆が伊藤さんの事を賞賛している。多少のリップサービスもあるかもしれないが、それを差し引いても、彼は人から間違いなく好かれている。

その賞賛は、当然の如く、くだんの常識はずれのスライダーの速さとキレなど技術的な事についてもあるが、印象的なのは、伊藤さんの物事に対する姿勢に対するものが多かった事である。ピッチャーとしてボールを投げる事、長期間のリハビリを余儀なくされ、どんなに苦境に陥ろうともそこにチャンスを見出し、それに向けて妥協をせずにひたむきに頑張る事について、多くの人が賞賛と共に証言をしている。

人生、生きていれば誰しも良い時もあれば悪い時もある。人としての真価は、悪い時にこそ問われるものである。悪い時は悪いなりに、その状況とどう向きあうかという事が大事である。伊藤さんは、インタービューで、”異常の中の正常”を目指す事に切り替えたという。もうデビュー時の輝きを取り戻す事はあきらめ、悪い状態におけるベストを作り上げる事に専念したという。人は、良い時の事が忘れられないものである。

プロの世界は、一見華やかではあるが、結果が全ての厳しく過酷な世界である。鳴り物入りで、アマチュアの世界からそこに飛び込むも、花が咲かずに夢半ばで離脱する選手は人知れず多い。

”このままでは終われないんです”。この言葉が伊藤の生き様を語っている。昨今、レジリアンスという言葉がビジネススキルやマインドセットとして聞かれる事が多い。下手なビジネス本を読むよりも、この本を読んで伊藤のプロ人生を追体験することの方がよっぽど、その意味の本質に近づけると思う。

2018年9月2日

今や世界的なカリスマ経営者となったカルロス・ゴーン。ルノー、日産のCEOを、そして三菱自動車の会長を兼務するという前例の無い型破りなグローバル経営者だ。

日産を瀕死の状態からV字回復で強い企業へと再生させたその手腕は、誰もが認めるところである。本書のテーマは、そのゴーンのリーダーシップであり、日産と早稲田大学、IMDがタッグを組んで行った「逆風化の変革リーダーシップ」という社内講座での受け答えを中心に編集されている。

以下、参考になった事

<b>制度について</b>
制度に絶対的な良し悪しは無い。その組織でその制度が機能しているかどうかが問題である。

<b>ダイバーシティ</b>
ダイバーシティ自体が成果をもたらすものではない。そのマネジメントが成果をもたらす。
異論なし。最近、多くの企業がダイバーシティを掲げているが、それを目的としてしまっているケースも少なからずあるかと思う。JVでの経験上、採用の際に優秀だと評価できる人材は圧倒的に女性が多かった。企業が成長するためには優秀な人材が必要なのは言うまでも無いが、優秀な女性が多いのであれば優秀な女性が活躍できるような組織や制度を整えるのが経営者の役割であろう。

<b>モチベーション</b>
モチベーションが高まる時は2つある。
1. 自分自身が何かに貢献していると実感できているとき
2. 自分自身が学んでいると思えている時

<b>日本人の課題</b>
自分の所属する集団の総意を大切にする。みんなの意見を大事にしようとする文化。リーダーが意思決定するうえでは、考え直さなければならない点である。
リーダは、相手の気分がどうなるかではなく、成功するにはどうするべきかに注力するべきである。
??
期せずして直近に読了した半藤一利の昭和史でもさんざん描かれていたが、集団的な意思決定により責任が曖昧になり、撤退するべきタイミングで、組織に対する余計な気遣いなどをすることで、すべき決断が出来ずに、あまたの悲惨な結果を招いたケースがあった。歴史から学ぶべきと皆言えども、結果的に同じ様な事を繰り返しているのが日本人である。日産が、破綻の瀬戸際まで追い込まれたのはこうした側面がなかったとは言い切れないだろう。

2018年8月28日

読書状況 読み終わった [2018年8月28日]
カテゴリ 1

昭和史のタイトルであるが、昭和時代の中でも第二次大戦で日本が敗戦するまでの期間を政治的、軍事戦略的観点から網羅的に解説している。今まで断片的にしか理解していなかった太平洋戦争を時系列的に俯瞰して理解することが出来た。開戦に向かう過程と背景、そして戦中で繰り返されるとんでもない意思決定の連続、敗色が色濃くなってきて尚も戦争をやめられずにぐずぐずと被害だけが拡大していく過程。読んでいて腹立たしいと同時に、参謀達や政治家達が無能で無責任であったことによって無駄に命を落とした多くの将兵や市民の事を考えるとやるせなさだけが募る。

日本が悲惨な戦争に突入していく過程が語られている。元々日本の軍事戦略はロシア・ソ連を仮想敵国として南進してくる事を想定している。日本を衛るには、朝鮮半島を防衛線とし、朝鮮半島を衛るためには、という事で満州を占領する。その事がかえって国際社会からの孤立を招き、外交的な選択肢を自ら狭めて破滅への道を歩む事となる。

外交、戦略上の重要な意思決定の局面で数々と下される、曖昧で無責任な判断や采配。このままでは、意見がまとまらずに内乱になってしまうとして、米国の参戦を決定づける日独伊三国同盟に舵を切る主客転倒した発想。それに対して、山本五十六はこう言ったという。「内乱で国は滅びない。戦争では滅びる。内乱を避けるために戦争に賭けるとは主客転倒もはなはだしい。」

歴史に学べとよく言われる。歴史は将来に大変な教訓を投げかけてくれるし、反省の材料も提供してくれる。同じ過ちを繰り返させまいという事が学べるはずである。

本書における昭和20年史において著者は教訓として以下の事をまとめている。
1. 国民的熱狂を作ってはいけない
2. 危機的状況において、日本人は、抽象的な観念論を好み、具体的な理性的方法論を検討しようとしない。
3. タコツボ社会における小集団主義 (身内以外の意見や情報は受け付けない)
4. 国際的常識を日本人は理解していない (ポツダム宣言の受諾は終戦を意味してない) 

しかし著者は、最後にこう戒める。だだしそれは、私たちがそれを正しく学ぶ意思が無ければ、歴史は何も語ってくれません、と。

こうした、本末転倒な意思決定や議論は未だにビジネスの現場でもお目にかかる事がある。その度に歴史から学ばない日本人の性に悲しさを覚える。

2018年8月27日

読書状況 読み終わった [2018年8月27日]
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スペイン語の入門書としては最適だろう。スペイン語はそもそも、初級者向けの書籍が中心であるが、その多くは単語・表現集であったり現在形を中心とした文法解説から成っているものがほとんどである。そのため、スペイン語でよく見かける表現でも文法が過去形であったりイレギュラーであったりするものは、除外されたり、本を読み進めなければそこにたどり着けない。

しかし、本書はスペイン語の学習者がおそらく抱くであろう疑問をコラム形式で、文法習得の定番の順番に固執せずに、こぎみ良く解説してくれるので、とっつきやすい。

2018年8月25日

読書状況 読み終わった [2018年8月25日]
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最終章を読み終える際、とてつもない寂しさに襲われた。もうこの物語が終わってしまうのかと。読んでいくにつれて、まるで自分がフィル・ナイトと一緒にナイキを立ち上げて、本書に出てくる全ての場面に立ち会っているような錯覚に囚われる。

世界最大のスポーツ用品企業というだけではなく、アメリカの、いや世界の文化的アイコンと言っても大げさではないナイキ。そのルーツは、オレゴン州立大学を卒業したての無一文の若者だった著者が、新興のスポーツシューズメーカーであったオニツカのアメリカ西部における代理店権を取得するところから始まる。

挑戦者としてのイメージで売るナイキであるが、そのブランドのいわばアイデンティティは著者であるフィル・ナイト氏の破天荒ともいえる行動力やチャレンジ精神が根元となっていることが本書の随所に書かれている。

戦後間もない当時、アメリカのカメラ市場では、キャノンやニコンなどの日本製品がそれまでに主流であったドイツ製のものを性能や低価格で凌駕しはじめ、人気を博していた。大学生時代に陸上選手であったナイトは、オニツカ製のシューズに出会い、カメラ市場を同じことがスポーツシューズの世界でも起こり得ると確信する。

その思いだけを頼りに、卒業旅行を兼ねての世界一周旅行の途中に立ち寄った日本で、神戸のオニツカ本社へと乗り込み、はったりをかましてアメリカ西部の代理店件を獲得する。社名のBlue Ribbonはオニツカから会社名を聞かれて、とっさに思いついた自宅にある選手時代のトロフィーについていた青いリボンから取ったという。無計画、無鉄砲でありながら、類い稀なる野心とそれを実現するための行動力は他人には真似のできないものだろう。会計士でありながら、キャッシュフローを上回る成長スピードで銀行と何度も揉め、あげくの果てには倒産寸前まで追い込まれる。この前のめりな性格が無ければ今日のナイキは無かったであろう。

一方、その倒産の危機を救ったのは、ナイキの将来を信じて、つなぎ融資を行った日商岩井だった。彼らの存在もまた、今日のナイキを創った功労者であろう。この事は、著者も最終章で感謝の言葉を綴っている。

本書は、著者の伝記であり細かい冗長な描写も多く、本の序盤はすこしつまらない。しかし、オニツカから代理店件の剥奪を言い渡されて、メキシコの別の工場でついに自社ブランドを生産するという展開になってから物語は一気にスピード感とスリルを増しページをめくる手が止まらなくなる。自社ブランドの名前については、社内で散々議論したという。ベンガル、ファルコン、ディメンションシックスなどの案が上がったというが、その名前では今の成功は無かったのかもしれない。設立当初から参画していたジョンソンが、ギリシア神話に登場する勝利の女神、ナイキ、というアイディアを生産直前に持ち込んだ。アイコニックなブランド、CloroxやKleenex、Xeroxは皆、短いサウンドであり、2音節以下だと。そして、KやXなどの強力な音が頭に残ると。ナイトは、メキシコの工場に、生産直前になってその名称を告げたという。名前が違っていたら、今の成功は無かったかもしれない。

その後、オニツカとの法廷闘争、常につきまとうキャッシュフローの不足、アメリカの税務当局から25百万ドルの納税不足を指摘された件など、トラブルと困難は続いた。おおよそ本書で出てくるエピソードは、上手く行ったサクセスストーリーよりも、むしろそうではない失敗談や苦労話が中心である。物語は、なんども議論を重ねては消えた株式公開をついに実施した1980年で一区切りとなり、次の最終章で時代は一気に現代へと飛ぶ。途中にあったはずであるナイキの黄金時代、マイケルジョーダンやタイガーウッズと共にナイキを一スポーツブランドから、アメリカの、いや世界のカルチャーアイ...

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2018年8月20日

小学生の勉強でもっとも大切なのは国語である事が延々と語られている。答えが明らではない問題に対して自分の力で考えて、答えを探していく能力が今後の社会においてはますます重要になってくる事については議論は無いでしょう。そうした能力の基礎をなすのが国語力という論点についても異論はないかと思います。この本を手にとっているひとは少なくともその論点については多少なりとも同意があるであろう。

一方、国語の重要性について熱く語る反面、国語力を伸ばすための具体的な方法は、一般論に終始している印象がある。もう少し、具体的な国語力を向上させる方法論についてもページを割いて欲しかった。

以下、印象的だった記述

読み解くとは、作者の意図を理解した上で、客観的に分析するという事。国語で必要なのは、客観的読解力です。

因果関係や理由づけが無い話し方は、意図が正しく伝わらないばかりでなく、人を説得することはできない。

電子情報の時代において、他者に向けてわかりやすい文章をかけるかどうかが、人生で成功するカギを握っている。そのために、子供の頃から行きしさせてほしいのが、?正しい日本語の使い方、?言葉の論理的な使い方。

勉強は、難関中学高校大学に合格するためのものではない。高い偏差値を獲得するためのものでも、他人との優劣を競うためのものでもありません。新しい時代は、答えの無い時代です。誰かが用意した答えを探し当てるのではなく、まだ誰も経験したことのない事態に対して、自分の頭で答えを見つけていかなければなりません。


2018年8月18日

読書状況 読み終わった [2018年8月18日]
カテゴリ 2

経済格差の本質は、知性の格差であるという。著者の既著で詳しく語られているが、人間はそれぞれ遺伝的に同じではない、という仮説を実証した研究を多く引き合いに出しながら、一般的には現代社会において受け入れられにくい個人間の知性の差異が、現実には存在するという事を言っている。その前提にたつと、政治的に行われている弱者保護のための社会保障政策などが、実効性や公平性という観点からは問題が多いと指摘している。多くの国の社会保障制度についても比較がなされているが、有効な解決策は見当たらないのが現実である。そもそも、この受け入れがたい事実を、事実として受け止めないままに、耳に聞こえの良いスローガンで国民皆平等を前提とした政策を続ける限り、問題は解決しない。

2018年8月1日

読書状況 読み終わった [2018年8月1日]
カテゴリ 2

子供への酷い虐待のニュースが絶えないが、虐待という言葉の持つ印象によって、自分とは関係無いと考える親は多いという。しかし、実際には、程度を問わず、虐待と言われるような事は普通の家庭でも行われているというのが実情である。臨床の現場で活躍する医師である著者自身も二児の母親であり、自分自身も虐待を行ってしまっていたという。著者は、子供の心や体を傷つける行為を、身近で現実的なものとして捉えて欲しいという願いから、あえて、マルトリートメントという言葉を使っている。

マルトリートメントによって、子供の脳は物理的に傷つき、変更する。それがその後の人生に大きく影響するような結果をもたらすという。例えば、酷い体罰を受け続けた子供は、脳の痛みを感じる神経系統が細くなり、痛みを感じにくくなるという。これは、脳が環境に合わせて変化しようとした合理的な適応である。そうした、子供は大人になってからより刺激が強いものを求めてギャンブルやアルコール依存、ドラッグなどへと走ってしまう。

マルトリートメントは、体罰といった身体的なものに限らず、暴言やニグレクトなどによる心理的なものも同様に含まれる。マルトリートメントがもっとも影響するのは、6〜8才頃だという。冷静さを欠いた教育やしつけは、結果的に子供を傷つけ、将来の伸びしろを縮めてしまう事にもなるのである。

2018年7月7日

おそらく皆が薄々と感じている事であろうと思うが、スマホが子供の学力に対して悪影響を与えている事を、統計的に検証している。

人間の脳は、基本的にシングルタスキングを前提に発達しているため、複数の事を同時にこなすマルチタスキングは脳に対してかなり強い負荷を与えるという。作業の効率性や精度の低下をもたらす。スマホやテレビなどを同時にこなす事はメディア・マルチタスキングといい学力や認知機能が低下する。

60年代のデンマークの実験で、健康な大学生に20日間ベッドでネタ状態で過ごさせたところ、筋力のみならず心肺機能も著しく低下した。使わなければ、失うという、Use it, ot Lose it. という考え方。

ITを使用することによって、人の認知機能、コミュニケーションを司る前頭葉の働きが弱くなる。実際に、対面で人と接する場合は活発に活動するが、電話会議では前頭葉は活動しないという。また、文章を手書きで書く場合と、キーボードでタイピングする場合も同様の結果になるという。

2018年5月26日

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キレイ事ではすまない現実について、学術的な考察やデータを論拠に語っている本。以下、キーポイント。

イリノイ州の調査で、高校を主席で卒料した人は、40%が弁護士や医者などの社会的評価の高い職業についていたという。一方、社会に影響を与えるような仕事をしている人はゼロだった。理由として考えられるのが、学校とは言われたことをきちんとする事を評価する場所だから。情熱や専門知識は評価されないのである。

悪は善より強い
一般的に、我々は「善は悪に勝る」という事を教えられてきた。しかし、多くの研究結果では、そうではないようである。現実的には、悪いもの(悪い感情、悪い人、悪い親、悪いフィードバック)の方が、良いものよりも強いインパクトを持つものである。

外交的と内向的
外交的な人の方が、収入が多いという。仕事の満足度、給料水準、昇進の機会などは、外交的な人の方が多い。また、酒を飲む人は飲まない人よりも10%、収入が上回るという。これは、飲酒が、喫煙とは異なり社会活動であるという側面が強いという事だと、研究者は推測している。

集団の中で最初に口を開き、積極的に話すという行動は、リーダーとして廻りにみなされる行動だという事である。経験則としても、納得出来る。

2018年1月8日

これまでの50年間、経営者の最大の悩みは資金繰り出会った。しかし、現代の経営環境では資金は豊富であり、調達コストも安く、既に競争の要素ではなく成っている。

現代の経営において企業の競争力は、「時間」、「人材」、「意欲」をいかにマネージするかに掛かっている。

2018年1月7日

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薄々皆が感じているであろう、テクノロジーの進歩が及ぼす人間への害悪について警笛を鳴らしている。テクノロジーとソーシャルメディアは、記憶や情報処理、集中力などの能力に外を及ぼすという、研究が紹介されている。

例えば、読むという行為は、一本の線に沿ってまっすぐ進む行為だったものが、インターネットによってハイパーリンクやスクロールによって膨大な情報への広がりを目の当たりにしながら、忍耐力を失い、集中できなくなっている。

おそらく、インターネットが普及する前に育った大人は、ある程度、本を熟読するという経験の基礎がある。一方、若者はどうするべきか、という問に対して、熟読と流し読みの能力の両方を身につけるようにすべきだと提言している。まずは、紙の本から初めて、理解力を身に付け、長い文章を読む力を維持しながら、デジタル書籍へと移行するべきだろう。

熟読は、絶えず鍛えるべき技術であり、筋力である、という。感覚的に、この指摘は正しいと思える。

また、リフレッシュする時間を取ることは、自分の生産性を高める条件であると理解するべきだという。接続を絶ち、静かな時間を取ることで、創造性は高まるという。退屈という時間が、人間には不可欠であり、ひらめきや創造性を誘発するという事である。

スマホやソーシャルメディアが脳に与える影響の研究はまだ始まったばかりであり、生涯にわたってスマホを使ったという人とそうでない人との比較の事例はまだ無い。結果は身を以って知るしかない、という結論である。

しかし、肌感としてデジタルメディア、スマホ、SNSは便利であるが故に、それに依存する事で、人間は考えることを放棄し、徐々にバカになっていくのではないかという恐怖感は漠然と感じるものである。不便は発明の母である、のは普遍の心理であると願う。

2018年1月6日

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経営コンサルタントから、RJRナビスコのCEOを経て、当時瀕死の状態で倒産寸前と言われたIBMのCEOに就任した著者が、企業文化を変えることで同社をITのブルーチップへと変革した話。

マーケティングの仕事は、需要を創る事で、営業の仕事は需要を埋める事だと言う。


経営哲学
- 手続きによってではなく、原則で管理する
- 我々がやるべき事の全てを決めるのは市場である
- 問題を解決し、同僚を助けるために働く人材を求めている。社内政治を弄する幹部は解雇する
- 私に問題の処理を委ねないでほしい。問題を横の連携によって解決してほしい
- 早く動く。間違えても、動きが遅すぎたものより早すぎて間違えた方がいい。
- 部門責任者は、技術的な専門用語をビジネスの言葉に翻訳する役割を担わなければならない→MF:知らない人が分かる様に、工夫して言い換える

ベアハッグ作戦
- 経営幹部 に今後3ヶ月間に最低5社の大口顧客を訪問する事を求めた
- 但し、5社で終わらせる理由はどこにもない
- これが顧客主導にするための方法であり、幹部にとって評価を得られるかどうかの試験でもあった

コンサルタント時代の秘密
- どの業界も顧客の期待や競争構造によって戦略が策定される。独自の戦略を開発するのは難しいし、直ぐに真似されてしまう。
- 結局のところ、どの競争相手も基本的に同じ戦略で戦っている事が多い。
- 従って、実行こそが成功への決定的な要素である。

2017年12月5日

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徳川家康や孫子の兵法を読んでも仕方がない。我々の知恵は、見たり、聞いたり、試したりという事で出来ている。

金と信用は天秤のようなもので、金に傾くと信用が失われるし、信用に傾けば金は付いてこない。信頼の上に成り立っていない言葉は、百万遍しゃべっても無駄になる。

著者のおやじの言葉として

一尺の物差しの真ん中は、右から5寸、左から5寸というがそれはウソだと言う。真ん中というものは、片方から4寸、もう片方から4寸といって、2寸の間を置いたところが真ん中だ。そうしないと話し合いは出来ない、5寸、5寸でいくと衝突して、余裕がなくなってしまう。

言葉は便利であるが、反面不便なものでもある。りんごの味を皆に聞いても、これだ、という適切な言葉は無い。世界中の人が納得できる様なりんごの味を表現することは出来ない。だから、言葉とはそういう不便なものだという認識した上でやらないとえらいことになる。

2017年12月5日

人類の名著、叡智の一つであろう。君主となるにおいて苦労を必要としなくとも、それを維持するに際しては多くの困難に遭遇すると言う。

マキャベリズムという言葉もあるが、政治や経営の世界でも、こうしたスタンスで上に立つものとして君臨するものは多いであろう。実際、いい人ではトップは務まらないのかもしれない
。現代の、社会におけるパワハラやブラック企業に対する批判は当然無視するべきものではないが、恐れられる事と憎悪されない事は両立できるとマキャベリが述べているように、それをものにした者が、トップとして偉大な業績を上げるのであろう。IYの鈴木氏や、ユニクロの柳井氏などがその典型なのかもしれない。

以下、学びとなった部分

気前が良いという評判は好ましく思えるが、気前が良いという評判を維持するためには、豪奢な行為を避けられなくなり、全ての財産を失う事となる。結果、民衆に重税を課し、民衆は君主を憎悪し、尊敬を払わなくなる。賢明な君主は、けちという評判を気にするべきではない。

愛されるよりも恐れられる方が安全である。恩恵を施している限り、民衆は君主のものであるが、切迫した状態になると彼らは裏切る。恐れられること憎まれないこととは容易に両立しうる。憎悪を割けるような形で、恐れられなければならない。そのためには、臣民の財産や婦女子に手を付けない事である。

信義は賞賛に値するが、賢明な君主は、信義を守ることが自らにとって不都合で、<span style="color:#0000ff;"><b>約束した際の根拠が失われたような場合、信義を守るべきではない</b></span>。

2017年11月19日

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著者が入社した当時、コダックの売り上げは4000億円に対して富士フイルムは270億円程度と10数倍の開きがあったという。デジタルカメラが普及して以降、それまで写真フィルムの販売を本業としてきたフィルムメーカーは苦境に立たされた。富士フィルムは、事業のポートフォリオを大きく入れ替える事で変革し、その危機を乗り越え、更に成長を続けている。国内2番手だったコニカは、カメラメーカーのミノルタと合併し、世界最大手であったKodakは、経営破綻している。そこに至るには、著者の強力なリーダーシップがあった事は疑いが無い。その著者による、仕事とは何か、どう生きるのか、という哲学や信念が本書では語られている。

リーダーの仕事とは何か
1. 読む (将来・情報・本質など)
2. 構想する (プライオリティ、アクション、スケジュールなど)
3. 伝える
4. 実行する

<b><span style="color:#0000ff;">オーナーシップ。これを持っていない人は、仕事に対する思い入れが浅く、自分が担当している仕事をどこか他人事として捉えている。</span></b>上司から言われたから、お客さんから言われたから、などという理由で仕事に取り組んでも成果は上がらないのは当然であろうし、成長も出来ない。


仕事をしていると、ここが勝負所だという場面が必ずある。そうした時に逃げずに立ち向かって克服できれば成長できる。そうすれば、社内での評価は「こいつは、会社に貢献できるやつだ」ということでさらにやりがいのある仕事を任されるようになる。

「やるべきこと」は「やるべきとき」に断固としてやりぬくしかない。

2017年11月10日

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中村うさぎが、著名人の悪口をとことん言いまくる本で、10年前くらいに出版しようとして大人の事情でお蔵入りになったものを再度出版にこぎつけたという事。ネタはやはり古さを感じるのは否めない。

田村亮子が、かわいい女性ランキングの4位になったことに対して毒づいたり、広末涼子の早稲田入学に噛み付いたり、和田アキ子は何様だと、言いたい放題。ただ、世の中の人たちが当時、なんとなく感じていた違和感や不完全燃焼感を、正面から叩き切るかの如く言ってのけているのはある意味爽快でもある。

週刊誌のコラム程度の内容で、あまり頭を使いたくない時に読むような本でしょう。

2017年10月29日

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