アマテラスの誕生: 古代王権の源流を探る (岩波新書 新赤版 1171)

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  • 岩波書店 (2009年1月20日発売)
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日本古代史の専門家による日本神話論。

・ヤマト王権の時代に国家神・皇祖神とされたのは、アマテラスではなく、今や知る人がほとんどいない太陽神「タカミムスヒ」だった。
・タカミムスヒは、朝鮮半島から流入したユーラシア大陸系の王朝神話に倣って創造された神である。日本土着の神ではなく外来神である。タカミムスヒは、ヤマト王権時代の王家の先祖神・国家神とされたが、広範な一般の人々にはほとんど親しまれていない。現代でも、日本史の研究者くらいにしか知られていない神である。
・四世紀以前の人々は、オオクニヌシを日本の主神と見ており、オオクニヌシの上に絶対的な権威がある天つ神がいるとは、信じていなかった。現在の日本神話は、古来より信仰されていたオオクニヌシの神話と、イザナキ・イザナミを起源とする高天原神話という二つの神話の融合である。オオクニヌシが高天原の神々に国を譲ったという天孫降臨神話は、二つの神話を融合するため、後から追加された物語である。
・アマテラスは優しく思いやりのある豊穣の神で、最高神にふわさしくない性格造形である。アマテラスは自分で意思決定しておらず、他の神々の行動に流されている。日本神話で最も活発に行動しているのは、スサノオである。イザナキ・イザナミ神話の作者は、アマテラスよりスサノオの方を神話の英雄的主人公として描いていたのではないか。
・何故主神は、タカミムスヒからアマテラスに交代したのか。天武天皇の頃、大和朝廷が日本の国家を統一した。中国に倣い、律令制度を敷く時、国家史である日本書紀と古事記の編纂が行われた。この時、日本中の多数の豪族を従えることを目的として、伊勢、宗像など日本各地で広く信仰されていた太陽神であるアマテラスが大和朝廷の主神に交代したのではないか。中華発祥の律令制度を適用する時、土着の神を主神にすることは、バランスがよかっただろう。
・日本史研究上は、古事記よりも日本書紀の方が重要。古事記がもてはやされるようになったのは、江戸時代の本居宣長以降。それまではみな日本書紀を日本史の原点としていた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 人文科学
感想投稿日 : 2015年9月26日
読了日 : -
本棚登録日 : 2015年9月26日

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