東京の子

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本棚登録 : 188
レビュー : 31
著者 :
finger0217さん 個人   読み終わった 

東京オリンピックの熱狂が終わり、外国人労働者があふれかえり、働き方も大きく変わった2023年の日本を描いた近未来社会派小説です。

戸籍を買い、別人の名義でアンダーグラウンドな暮らし方をしている主人公がの舟津。彼が派遣先の料理屋から失踪したベトナム人女性を捜す依頼をうけることから、物語は始まります。舞台となるのは東京2020の跡地に生まれた産学連携の大学校、東京デュアル。職住近接で、スタッフと学生、連携企業の社員を含めると10万人規模の「街」を形成している新しい「社会」をみて、またそこで暮らす学生たちと触れ合うことを通して、他者とのかかわりを最低限に保ってきた舟津もまた変わり始めます。

前半部分の、何となくつかみどころのない社会の様子といい、どことなく取り繕われたような「東京デュアル」の雰囲気といい、リアルであるがゆえに、少し読みにくく感じる部分はありますが、物語が後半へと進むに従って、ストーリー展開のスピード感が増してゆきます。
平たく言ってしまえば、サークルクラッシャーにふりまわされる学生組合のごたごた、といえなくもないですが、その背景にある労働環境の設定であったり、学生一人ひとりの思考とその背景にある生い立ちなどの描かれ方が精密で、しっかりと読ませてくれる作品でした。
特に、主人公の舟津がパルクールの技を披露するシーンは読んでいてもわくわくしましたし、可能ならばぜひ映像化されたこの「近未来の世界」を見てみたいとも感じました。

これから、社会に出てゆく中高生にとっては、現実に現れうる可能性のある社会の「型」のひとつとして、「理想的」に見える東京デュアルの取り組みのどこに「欠陥」があるのかを考えてみることで、社会に対する関心を高めることができるでしょうし、自分だったらどのような社会で暮らしたいか、ということを考えるきっかけにもなるかもしれません。
2019年の2月という、東京オリンピックにむけて(一部では)盛り上がってきているタイミングに、この本が出版されたという「意味」について考えながら読んでみるのも、また面白いかもしれません。

レビュー投稿日
2019年7月27日
読了日
2019年7月27日
本棚登録日
2019年2月14日
1
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