来福の家 (白水Uブックス)

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レビュー : 7
著者 :
finger0217さん 仕事   読み終わった 

<内容紹介より>
台湾で生まれ、日本で育った楊縁珠は、大学の中国語クラスで出会った麦生との恋愛をきっかけに、三つの言語が交錯する家族の遍歴を辿り、自分を見つめ直すが――。すばる文学賞佳作受賞の鮮烈なデビュー作「好去好来歌」に、希望の光がきざす表題作を併録。日本語、台湾語、中国語が奏でる新しい文学の誕生!
――
言葉を知らなかった頃の記憶を出発点に、小説を書いてみたい。赤ん坊だった自分の周囲にあふれる音のざわめき、大人たちが交わしあう声のリズムや抑揚。言語を言語と認識する以前の、ありとあらゆる言語が私の「母国語」となり得る可能性を持っていた幸福な無文字時代の記憶を書くところから、小説を始めたい(あとがきより)。

――――
日本で暮らす、在日外国人が主人公の作品は多くありませんが、この作品は一読の価値があると思いました。
「異質な他者」としていじめられているわけでも、社会の中で過剰な生きづらさを感じているわけでもない。ただ、両親の母語である「台湾語」と、祖父母が幼少期に教え込まれた「日本語」、現在台湾の共通語である「中国語」の3つの言語が入り混じった家庭で育った、中国(台湾)の名前を持つ日本語しか話せない主人公。
幼いころには気づかなかった、「日本人」の友達とのちがいを、学齢が上がるにつれて意識するようになり、「きちんとした」日本語を話せない両親に不信感を募らせることもありました。
はたして自分は「ナニジン」なのか。自身のアイデンティティを探りながらも、一歩ずつたしかに前へと進んでいく姿には胸を打たれるものもありますし、まさにこの作者でなければ描くことができなかった物語だと感じます。

多くの外国籍(あるいは日本語以外の言語を母語として家庭内で使用している)生徒が少なくない昨今、学校教育にかかわる方には強くお勧めしたい1冊です。

レビュー投稿日
2018年3月9日
読了日
2018年3月9日
本棚登録日
2018年3月9日
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