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バレー部の「頼れるキャプテン」桐島が、突然部活をやめた。それがきっかけで、田舎の県立高校に通う5人の生活に、小さな波紋が広がっていく…。野球部、バレー部、ブラスバンド部、女子ソフトボール部、映画部。部活をキーワードに、至るところでリンクする5人の物語。第22回小説すばる新人賞受賞作。
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「桐島、部活やめるってよ」というタイトルなのに、桐島は人の話にしか出てこない。桐島が部活をやめたことで始まる物語なのだが、主人公は桐島ではなく、別の五人の同級生たちなのである。桐島が部活をやめたからと言って、彼が属していたバレー部以外の生徒の何かが変わるわけではないのだが、部長として輝いていた桐島の突然の退部は、ほかの者たちの心にも小さな波紋を広げ、考えるきっかけを与えたように思われる。流行やカッコよさの基準はわたしの時代とは違うが、生徒間の歴然としたランク付けやクラスのなかでのアイデンティティに悩む様子は、おそらく不変のものではないだろうか。ばかばかしくて一生懸命で、自分のなかだけでもがいている高校時代が懐かしくなる一冊である。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
あ行の作家
- 感想投稿日 : 2013年2月5日
- 読了日 : 2013年2月5日
- 本棚登録日 : 2013年2月5日
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