+++
これは、もうすぐ二十一世紀がやってくる、というころに起きた、愛すべき子供たちの闘いの物語。―不可能状況下で煙のように消え去ってみせる子供たちと、そのトリックの解明に挑む大人の知恵比べ。単なる家出か悪ふざけと思われた子供たちの連続失踪事件は、やがて意外な展開を辿り始める。地域全体を巻き込んだ大騒ぎの末に、雑誌編集者の猿渡の前に現れた真実とは?いま最も将来を嘱望される俊英が新境地を切り拓く、渾身の力作長編。ミステリ・フロンティア百冊到達記念特別書き下ろし作品、遂に刊行!
+++
小学4年生の子どもたちが考えたこととは思えない出来事の連続だった。初めは単純に、子どもらしい動機からだと思って読み始めたが、ほどなく、なにかもっと深い理由が隠されているのではないかと思い始めた。城野原団地の内と外(傘外)との確執や、雑誌記者の佐々木と城野原との関わり、キャンプで起きた哀しい出来事、などなどが絶妙に絡み合い、事実が単純には見えてこないのも興味をそそられる。当事者の子どもたちが、意外過ぎるほど深刻にいろんなことを考えていることにも驚かされ、また、大人もその気持ちをないがしろにはできないと思い知らされる。ラストは、明るい未来を感じさせられるものになっていて、ほっとした。ほんの短い期間の出来事とは思えないほど濃密な内容の一冊だった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
あ行の作家
- 感想投稿日 : 2018年12月23日
- 読了日 : 2018年12月23日
- 本棚登録日 : 2018年12月23日
みんなの感想をみる