アメリカのデモクラシ- (第1巻 上) (岩波文庫)

  • 岩波書店 (2005年11月16日発売)
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トクヴィルは、民主制は(ヨーロッパでも)不可避的という見通しの下に、アメリカの民主制の制度的あり方やその成立条件を検討している。

彼は第1章で北アメリカの地形を概観した後、第2章では国民の起源ないし形成期にすでに国民間の優劣がなく、かつ、「民主的共和制」と不可分のピューリタニズムがあったことを指摘している。その「社会状態」は、第3章によれば、市民の平等と知識の平等が著しい状態であった。第4章では、アメリカのイギリス系植民地に人民主権が原理として根づいており、革命後はそれが自治体から政府へと波及したと論じられている。第5章では、個々の州の事情が検討されている。その特徴は、例えば、ニューイングランドに見られるように、地域共同体(タウン)の自治にある。第6章によれば、アメリカの司法権は、法律よりも憲法に基づいて審判できる。第7章は、ヨーロッパでは政治裁判で公務員に重罪を課すが、アメリカでは公的資格を剥奪するにすぎないことが指摘されている。連邦憲法を扱った第8章によれば、アメリカでは、連邦の主権と州の主権が分割され、連邦政府の権限は、戦争・通貨・交通・課税などに限定されている。①州の原理を上院に国民主権の原理を下院に代表させた立法、②大統領が長であり立法議会との対立の生じない行政、③他国にないほど大きな権力を有し、立法府への権力集中を防止する司法が論じられている。

アメリカの特徴は、連邦制度にあり、それは、地域の多様性を生かしつつ、防衛のような社会全体に関わる行動を規制している。とはいえ、すべての国家が連邦制度を採りうるわけではない。それを可能にした条件とは、市民の政治的知識の普及、「文明」の同質性、とりわけ地理的な環境である。

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感想投稿日 : 2014年4月29日
読了日 : 2014年4月29日
本棚登録日 : 2014年4月29日

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