Another

3.92
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本棚登録 : 3590
レビュー : 709
著者 :
fox-tail-ranさん  未設定  読み終わった 

 ようやく読み終わって、胸に残ったのは切なさと空しさだけだった気がする。それくらい、結末はすっきりしなかった。超自然現象なのだから、完全な解決は望めないとしても、今年の<死者>とか、鳴の目とか。そして、生き残ったけど…という主人公のうっすら見える後悔が、後味を悪くさせた。
 物語はとても面白く、恐怖の描写に過剰な形容詞を付けたりせず、また長々と説明口調になったりもせず。淡々と事実が描写され進んでいく様式は、頭の中で情景を思い浮かべるのには必要十分であり、映画のようにパッパッと画面が切り替わるようなテンポの良さでこの世界に引き込んでくれた。だからこそ恐ろしく、また危機感を煽ってくる。次々に文字が飛び込んできて頭の中で再生されていく心地よさにページ数の多さなど全くきにならない。実に素敵な世界を見せてくれる。
 人物も魅力的で鳴の言葉遊びや玲子さんの溢れ出る魅力、霧果さんの形容しがたい不気味さも「分かりやすく」、この世界の人々は魅力的でしょうがない。勅使河原や望月と言った、ちょっと考えづらい名前が多くて最初は戸惑ったが。

 しかし、だからこそ結末は悲しい。とにかく切ない。結局、助かりはしたが解決はしておらず、なんとか生き残れてよかったね、なエンディングなのにとても淡白で、嬉しさがでてこない。それだけ、多大な犠牲と後悔の残る決断がそこかしこに散りばめられていて、誰もが納得なんていってないからなんだと思う。
 本を閉じた後、もう一度思い返しながらそっと涙を浮かべてしまう、とにかく切ないお話でした。



ここからネタバレあり。




 実は、超自然現象というのは存在せず、何かで説明できるのではないかとかなり疑っていました。ミサキメイが存在するかどうかが、わりと簡単に解ったので、もしかして死者とかも説明が付くのではないかと。
 メイは、初めて学校で会ったときの「いいの、これ?」でわかりました。おまじないとは気づきませんでしたが、イジメ、または何かの理由で居ないものとして扱われているのはすぐに分かります。名札の件が分かったらもう天才ですね。
 ただ、今思うとそれも作者の罠だったのかも知れません。つまり、分かりやすく得体の知れないメイの存在に一定の理屈だった答えを与えることで、解決したと思いこませたのではないかと。私はまさにそれに引っかかったタイプで、「メイが普通に存在する」という解答が当たってしまったために、この死者や現象も何か説明の付くもののはずだと思いこんでしまったのです。
 私の推測は、夜見山岬は死んでから「生きているもの」として扱われたのではなく、逆に生きているのに「存在しないもの」として扱っていた。ようするにイジメですね。しかし、何かのきっかけでイジメは無くなり、元の状態に戻すことにしたが既に居ないことが当たり前になっていたためにどうにも居心地が悪い。そこで、何か皆が納得のいく答えを与えようとして、「実際に今まで死んでたけど生き返ってクラスに復帰した」とすることで存在を認めたのではないか、と。一昨年の居ないものが発狂して自分が存在することを認めさせようとした件も、その伏線だったのではないか、と。
 その後、一連の現象の原因になった人たちは、時間の経過で自然に当時のやりとりを忘れてしまい、夜見山岬のことをうっすらとしか思い出せず、集合写真を見ても誰だかわからなくなってしまう。そこに、数年続いた三年三組の事件が尾ひれとなって「ひとり増えた」という呪いに昇華してしまった、と。
 その後の一連の事件は、集団催眠と疑心暗鬼の賜物だったのではないかと思っていました。つまり、これは三年三組に関わるものへの呪いだ、という噂が先行する。しかし、皆は半信半疑で信じ切っては居ない。そこへ、何かのきっかけで誰かが死ぬ。噂が真実味を帯びる。これで集団催眠は完成。あとはもう、誰が死者なのか、自分自身が死者なのではないかという疑心暗鬼から人を殺してしまう、あるいは自殺する。そうなれば、二等親以内の血縁関係や夜見山から離れれば助かるといったルールも説明がつく。後は最初のキッカケを作る本当の殺人鬼さえいれば解決する、と思ってました。
 そのキッカケで怪しいと思ってたのが霧果さんです。メイの発言から本当の母親でないことはすぐに分かったのでどこかから養子でもらった子に、義眼はめるという中々におかしな神経していたので怪しいな、と。殺した人たちで人形作ってたとか、メイそっくりの人形は本当の我が子でとか思ったり。まぁこれさハズレてよかったと思ってましたが。実は玲子さんと同一人物だったりしてとかも思ってましたが。でも確信は得られず、でした。

 私としては、以外と筋が通りそうかな?とも思っていましたが、あるところでこの現象はやはり超自然現象なんだと納得せざるを得なくなりました。それが、15年前の事件、つまり、死者を殺せば災厄は止まる、というルールと「メイの目」でした。この、「死者を殺せば災厄は止まる」ルールが疑心暗鬼のキッカケで、誰かが毎年故意にこの情報を流してたのではないか、とも思ってましたが、こじつけが過ぎるというか、この頃にはほとんど超自然現象を信じていたのであまり考えませんでした。
 そして「メイの目」。これで完全に納得せざるを得なくなりました。もう、どうあがいても説明できないと。そして叙述トリックによる死者は玲子さんだった結末。結局玲子さんを殺さなければならなかった最後。玲子さんを誰も覚えていないその後。鳴と榊原の最後まで淡白なやりとりに、ただただ切なくなっていました。
 本当に、誰も救われず、何も解決せず、そして来年からも彼らはこの呪いと生きていかなければいけない。もしかすると、死者として。そんな悲しさです。なんだかやりきれませんね。
 私が、再び彼らとこの謎にもういちど関わるのは、たぶんかなり先の、時間の経過でこの現象を忘れた頃になりそうです。

レビュー投稿日
2011年11月17日
読了日
2011年11月16日
本棚登録日
2010年8月10日
2
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