この漫画はもともと、乖離性人格障害の患者の話しとして描きはじめられたのだという。欲望を自らおさえつけている女に、奔放な別人格がうまれる、みたいな、さして目新しさもない筋書きで、心的外傷のようなものもとくにないのだけれど(トラウマ的な描写や背景がいっさい出てこないため、こちらはそう推測するしかない)開放的になれない性格がそれを引き起こす、みたいな筋立てだったようだ。それが途中から憑依霊の物語になってしまうのはいったいなんの冗談なのか。といいたいが、そのプロットは著者いわく、読者受けしなかったのらしい。しかし、だからといって、伏線(らしきもの)もさまざまな謎も、途中ですべてうっちゃり、素知らぬ顔でなかったことにするのは、あまりにいいかげんすぎる。おそらく作者は、蝶々を性的に解放された自由な魂、淫靡で邪悪だがうつくしいもの、そしてドマックスを、清濁あわせ飲む懐のひろい男として描きたかったのだろう。後書きを読むとかれらに肯定的だ。でもその試みは失敗している。だって蝶々は解放されてなんかいない。むしろ振り回されている。なにしろセックスのためには手段をえらばない、殺人すら厭わない女だ。どうかんがえたって彼女こそが、だれよりも性にしばられている。あと画面のしろさがやたら目立つし、OLが投身自殺するときのアングルなど、構図もえらく下品で[これはひどい]とおもわずタグをつけたくなった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
漫画
- 感想投稿日 : 2010年6月27日
- 読了日 : 2010年6月27日
- 本棚登録日 : 2010年6月27日
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