消費資本主義のゆくえ: コンビニから見た日本経済 (ちくま新書 263)

著者 :
  • 筑摩書房 (2000年9月1日発売)
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本棚登録 : 71
感想 : 7
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バブル崩壊後終わりの見えない不況が続く日本。
特に景気を下支えする「(個人)消費」が落ち込んでいる事が指摘されている。
経済学において通常、消費の落ち込みは適切な需要調節により回復されると考えられ、「消費」自体を主体的に研究対象とすることは少ない。
著者は、この「消費」に着目した研究を行っている。
戦後の日本人の「消費の歴史」を辿っていくと、最終的に到達するのがコンビニであった。
さて、景気回復のために何をすればよいのか?
通常は完全市場を実現する事で、需給バランスが適切化し、必然的に消費も回復すると考えられる(これが、消費が直接的な研究対象とならない理由の一つ)。
そのために日本ではバブル崩壊後、これまでの経済慣習や法制度の改正が急速に行われてきた。代表格が終身雇用制度の崩壊である。
また、各種規制緩和も多数行われてきた。そして、完全市場を達成する上で重要となるのがIT技術の進化による消費者主権の実現である。
それでは、現在(本書は2000年発行)景気は回復したのか?
これはどう考えても否である。
なぜ回復しないのか。
一つの考え方としては上記に述べたような改革が不十分である事が言える。
その一方で消費者に対するアンケートなどからは「将来に対する不安」が消費を抑えている事が分かる。
著者は、消費に着目する学者として、後者をより重視する。
そして、現在のように急激に規制緩和を行う事では不安は払拭されないと主張する。
また、IT技術の進化も過大視すべきでないとしている。

そして、より大きな観点からの主張として、日本人が今こそ豊かさとは何かを考える事べきだと主張する。かつての高度経済成長の様に、豊かになりさえすれば、文化や都市の景観の破壊などがまかり通る社会に疑問を呈している。
消費に対する考察以上に、「豊かさとは何か」という主張が印象的であり、また、今後「成長しない」であろう日本を生きていく者として、各が問題意識を持つべきテーマだと言える。

全体的には面白いと感じたが、やはり新書故か、どうしても読みにくさがつきまとう。
特に本書のように沢山の理論や批判を列記する場合、文章でダラダラと書かれるとすごく読みにくい。
また、本書のタイトルにもなっている「消費資本主義」などの言葉があまり明確ではないので、しっかりとした索引が欲しかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2011年1月22日
読了日 : 2011年1月21日
本棚登録日 : 2011年1月21日

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