零度のエクリチュール 新版

  • みすず書房 (2008年4月19日発売)
3.88
  • (8)
  • (13)
  • (12)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 223
感想 : 10
5

バルトのデビュー芸術論集。<エクリチュール>を、多様な分野におけるものとして論じた。
大体において読みやすいが、ぽつぽつと疲れる表現があり、そこは再読、再再読しました。
目次がけっこう垂涎ものなので示してみます。


Ⅰ エクリチュールとはなにか
   政治的なエクリチュール←面白いです
   小説のエクリチュール
   詩的エクリチュールは存在するか
Ⅱ  ブルジョア的エクリチュールの勝利と破綻
    文体の職人
    エクリチュールと革命 
    エクリチュールと沈黙←超面白いです
    エクリチュールと言葉
    言語のユートピア

まあ、この<エクリチュール>ってなんだ、という話になるんですが、”Ⅰ”の初めの章で不親切に説明されています。すっとばして省略すると<言語>、<文体>がそれぞれ、「自然のもの」、「作家の身体と過去から生まれる所与のもの」であって絶対的であるのにたいして、<エクリチュール>とは<言語>と<文体>とのあいだに存在する「個性」である、とのこと。
それは作家が選択するもの、あるいは選択せざるをえないものであり、その行為性が重要、面白いとかんじた。

その後の諸章では、エクリチュールは行為性を持つので、種種の政治体制、諸時代、派閥など、共通性を持つものたちにおいてみられる、と。こう書くとかんたんなはなしのようですが、バルトは懇切丁寧に、段階的にエクリチュールの概念を説明しようとしていて、そして少し破裂的な説明なので、”Ⅰ”の部は読みにくい箇所があります。

”Ⅱ”部の「エクリチュールと沈黙」においては僕が好きなはなしである歴史からの疎外が扱われているので気に入りました。
そこで示される<白いエクリチュール>が本のタイトルの<零度のエクリチュール>のことなんですが、ここでの「白い」とは極性を持たない中性的なものだということです。「個性」であるエクリチュールが無極性であることなど可能かという試論がなされていて、その箇所が超面白い。

まあそんな感じに面白く、文章の表現もわりと楽しい本です。断章の集まりであり、それぞれが試論段階な気がしたけど、楽しく読める良い本でした。
   

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 評論・随想・随筆・その他
感想投稿日 : 2010年1月4日
読了日 : 2010年1月4日
本棚登録日 : 2010年1月4日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする