墓地展望亭・ハムレット 他六篇 (岩波文庫)

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本棚登録 : 60
レビュー : 11
著者 :
深川夏眠さん  怪奇・探偵小説   読み終わった 

1930年代から最晩年までの作品から選び出された8編。
改稿を繰り返し、彫琢を重ねたという名品揃い。
物語が面白いだけでなく、文章そのものが美しくて、
鳥肌や眩暈を催した。
故・中井英夫が終生、師と仰ぎ続けたという話にも頷ける。

以下、特に感銘を受けた作品について。

■「雲の小径」
 飛行機での移動中、
 奇妙に感傷的な気分に陥った男の心の揺らぎ、
 その長くて短い旅。
 泉鏡花と内田百閒を掛け合わせて
 戦後風の味付けを施したかのような逸品。

■「湖畔」
 不貞を働いた妻を手打ちにした華族の男が、
 経緯を綴った手記を幼子に宛ててしたため、家を去る。
 そこで明かされる真実とは。
 リアリティの薄さなぞ、どうでもよくなる、
 無茶苦茶だが愛おしい物語。
 人は誰かを心底愛したら、
 他の人間にはいかようにも冷酷になり、
 それ以外の物事には徹底して無頓着になり得るのかもしれない。

■「虹の橋」
 どこでどんな風に誕生したか、という、
 本人には何の責任もないことから自由を制限されながら、
 懸命に生きようとしたものの、
 身に覚えのない罪を背負わされた女が、
 たった一つのささやかな希望に縋る――。
 胸が痛む悲惨な話で、読むのが辛かった……が、
 きっといつか読み返す気がする。

レビュー投稿日
2016年2月26日
読了日
2016年2月26日
本棚登録日
2016年2月9日
4
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