美しい星 (新潮文庫)

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本棚登録 : 1681
レビュー : 186
著者 :
深川夏眠さん  純文学   読み終わった 

宇宙人としての意識に目覚めた父。
最初はその言い分を笑って聞いていた家族も
じきに「霊感」に打たれて父に従う。
彼ら四人家族は
各々別の惑星から地球に飛来した霊魂を宿し、
今では肉体も精神も「それ」に支配されている――

という設定から、

・フォリアドゥならぬ四人狂気?
 folie à quatre(四人狂い)、
 folie en famille(家族狂い)と呼ばれる感応精神病。
 一人の妄想がもう一人に感染し、
 複数人で同じ妄想を共有することが特徴。

――かと思ったが、そうではなかった。
至って真面目に
人類を核戦争による滅亡から救うべく奮闘する父親と、
俗物なりに夫を信じて寄り添う妻、
それぞれ悩みを抱えながら
父を支えようとする息子と娘の姿が描かれる。

終盤の、父 vs 一家を敵視する仙台の三人組による
人類の存亡を巡る激論の場の雰囲気は、
埴谷雄高『死霊』を彷彿させる迫力だけれども、
四人家族の言動は終始、特に父と娘が真剣な分だけ、
どうしても滑稽に映ってしまう。

とはいえ、第七章、
作者自身の歌舞伎の演目「鰯売恋曳網」に
言及する箇所の
自虐的セルフ突っ込みは素敵(笑)。

ところで、第一章(p.15)
下記の「宇宙人」を「吸血鬼」に置き換えても
話が通じるな……と、
萩尾望都『ポーの一族』を思い浮かべて
ニヤニヤしてしまった。

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 宇宙人としての矜りを持つことは結構だが、
 少しでも傲慢になれば、
 それだけ裸になることであり、
 世間から見破られる危険も多い。
 自分たちの優越性は絶対に隠さねばならぬ。
 世間は少しでも抜きん出た人間からは、
 その原因を嗅ぎ出そうと夢中になるからだ。
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レビュー投稿日
2016年7月25日
読了日
2016年7月24日
本棚登録日
2015年8月9日
3
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『美しい星 (新潮文庫)』のレビューへのコメント

mkt99さん (2016年7月31日)

深川夏眠さん、こんにちわ!(^o^)/

そうなんですよね。
真面目であれば真面目であるほど可笑しみがあるんですよね。

人類の方が狂気に満ちていると言いたかったんでしょうかね・・・。

「宇宙人」を「吸血鬼」に置き換えても・・・。
なるほど!いろいろと置き換えて楽しめそうですね!(笑)

深川夏眠さん (2016年8月1日)

おおっ、ありがとうございます!

この本はいろいろな方が三島の異色作!
と言っておられるので
興味津々で買ったものの、
一年近くも寝かせてしまいました(笑)。

東西冷戦下という時代背景があって、
いつ、一瞬にして「世界」が終わっても
不思議ではない、それを食い止めたい……
という真剣な気持ちは
伝わって来るのですが、
異様に真面目過ぎて270°くらい(?)
回転した奇怪な面白さを感じました。

仙台チーム(笑)の脳内イメージが
どうしても楳図かずお絵の「悪い大人たち」
になってしまって困りました(;・∀・)ゞ

ラストに、あの一家にとっての「救い」が
訪れたので、読後感は悪くなかったです。

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