春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

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本棚登録 : 2475
レビュー : 370
深川夏眠さん  英米語文学   読み終わった 

この小説を読んで何も感じない者は幸福である。

完璧な妻、そして母であることを自認するジョーンは、
体調を崩したという末娘を見舞うため、
嫁ぎ先のバグダッドへ赴いた帰り、
乗り継ぎ列車に間に合わず、
トルコのテル・アブ・ハミド駅のレストハウスに泊まる。
天候の関係で遅れに遅れ、なかなか来ない列車を待ちながら、
かつてない暇な時間を手に入れた彼女は
否応なしに来し方を振り返り、
自分が犯してきた過ちに思いを致すこととなる……。

視野が狭く想像力が貧困で、他者の痛みに極端に鈍感な女が、
初めて内省によって己の愚かさを自覚する話。

主人公は私の大嫌いなタイプの女。
読ませたい人が何人かいるけど、
鈍いヤツにはどうせ通じないか(苦笑)。

狭い範囲の問題にさえ、まともに向き合えない人間は、
戦争が始まると言われても「まさか」と一笑に付すばかり――
という描写が鋭く、恐ろしい。

宿泊所のインド人管理者がマメでイイ奴。
私なら、有り余る時間を、差し向かいで紅茶を飲みつつ
身の上話を聞かせてもらって過ごすと思うけどなぁ。

レビュー投稿日
2017年4月6日
読了日
2017年4月6日
本棚登録日
2016年7月17日
4
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