ヘリオガバルス: あるいは戴冠せるアナーキスト (河出文庫 ア 5-2)

  • 河出書房新社 (2016年8月8日発売)
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感想 : 7
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白水uブックス版(多田智満子=訳)を
学生時代から何度か読んでいるが、新訳にも手を出してみた。

ローマ帝国第23代皇帝
マルクス・アウレリウス・アントニヌス・アウグストゥスこと
幼名ウァリウス・アウィトゥス・バッシアヌス、
セウェルス朝第三代当主でもあった通称ヘリオガバルス
もしくはエラガバルスの評伝――というには迂遠な、
著者アントナン・アルトーによる幻視的エッセイ色の濃い創作。
アルトーは無秩序で退廃的な、
ローマ史上最悪とも評される少年皇帝に、
狂気と紙一重の状態に置かれた自分自身を重ね合わせていたらしい。

第一章 精液の揺り籠
 ヘリオガバルスの誕生に繋がる、一族の物語。
 政権を奪還するため、あらゆる手段を駆使した女たちの
 画策によって産み落とされ、
 神官として育てられた男児の背景。
 204年にアンティオキアで生まれたウァリウスは、
 幼年のうちに太陽を祀る司祭に据えられ、
 太陽神ヘリオガバルスを名乗って神との同一化を目論んだ。
 アルトーは、そんな彼が採用した一神教の正当化を
 アナーキーと呼んだ。

第二章 諸原理の戦争
 バッシアヌス一族が祀った太陽神の宗教について。
 男児として生まれながら
 女になりたいと願ったヘリオガバルスは、
 相反するものを、苦痛を味わって自身の内で一致させたが、
 男性的なものと女性的なものの間に抽象的な闘争を
 生じさせた。
 アルトーは、ヘリオガバルスの生涯を、
 そうした原理の解離の類型であると考えた。

第三章 アナーキー
 息子を献身的に支えた母ユリア・ソエミアと、
 彼女の権力への執着に裏打ちされた愛情に
 報いようとしたヘリオガバルスだったが、
 内面は混乱し、行動は倒錯的だった。
 玉座に就き、専制政治を敷いて、
 どんな法も受け入れない支配者となった彼は
 アナーキストだった――と、アルトーは述べる。
 ヘリオガバルスに蹴散らされたローマ人たちにとって、
 彼の治世は無政府状態だったが、彼にしてみれば、
 それは一族が奉ずる宗教の復権であり、均衡の回復だった。
 しかし、自身の息子アレクサンデルを王位に就けようとした
 叔母ユリア・マンマエアの陰謀によって、221年、
 ヘリオガバルスと母ユリア・ソエミアは無残な死を遂げた。

【余談】
 白水uブックス版
 https://booklog.jp/item/1/4560070806
 表紙画像が誤っています。
 Amazonとブクログの連携ミスらしいのですが、
 2018/01/25、
 ブクログから修正不能との返答。
 読書SNSの運営に本好き・愛書家は存在しないのかと
 頭を抱えた次第。
【余談付記 2021/02/05】
 白水uブックス版
 https://booklog.jp/item/1/4560070806
 表紙画像がいつの間にか正しい状態になっていました。
 但し、修正完了のお知らせはいただいていません。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  フランス語文学
感想投稿日 : 2019年1月24日
読了日 : 2019年1月23日
本棚登録日 : 2019年1月13日

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コメント 4件

佐藤史緒さんのコメント
2019/01/27

おじゃまします♪

>読書SNSの運営に本好き・愛書家は存在しないのかと
ここ苦笑いしちゃった…同意。
もっとも、本好きは世間ウケとか流行とかに、よく言えば流されない、悪く言えば時流に乗れないから、企業経営やビジネスとは相性が悪いのでしょう(^_^;)
ブクログ公式本棚もTSUTAYAの平積みコーナーみたいで30年後には絶版になってそうな本ばかりだなあと思うことあります。
でもそうしないとユーザーの多数派の支持が得られない→ビジネスにならないんでしょうね。やむを得ないところです。

お互い細々(でもしぶとく)生きていきましょうね٩( 'ω' )و

深川夏眠さんのコメント
2019/01/27

いらっしゃいませ、お茶どぞー( ^^) _旦~~

無料サービスなので、あまり文句を言ったり
注文をつけたりするのは筋違いだと理解してはいますけれども。
ある程度利用歴の長いユーザーには
複数回に渡る仕様の改変(改悪)とか、運営会社の変更だとか、
この画像表示問題のような細かい点に目配りができず、
融通も利かないところが、なんだかなぁ(溜め息)……です。

古い、あるいはあまり注目されていないけれど名著だよ、
みたいな本を発掘するためのツールではないですよね。
書店で平積みにされている本を更に売るためのシステムなのかな、と。
運営者の中に、書物に対するこだわりの強い人がいれば、
もう少しマシな対応をしていただけるのでは、とも思いますが。

Twitterを使い始めた当初、ブクログ運営アカウントもフォローしたのですが、
流れてくる話題があまりにも役に立たず、単純に面白くもないので(爆)
フォロー解除してしまいました(笑)。

こちらも「まあ、その程度のツールだし」と割り切って付き合うのが
一番かもしれませんね(トホホ)

佐藤史緒さんのコメント
2019/01/27

お茶どうも〜 旦(´∀`=)
そう、発掘ツールじゃないんですよね。以前はプレミアム会員になれば自分でオリジナルアイテム登録ができ、画像も登録できたんですけど、今はそれもできなくなってしまいました。残念です。
結局、本を商品と捉えるか、作品と捉えるかという価値観の問題ですよね。あるいは読書を自己啓発やコミュニケーションのための手段とみるか、読書そのものが目的とみるか。私は後者の方なんですけど、ブクログの方向性としては明らかに前者ですよね。

深川夏眠さんのコメント
2019/01/27

どもどもー。

オリジナルアイテム登録可能、だが、画像を貼り付けられないことについて、
先日、運営に質問しました。
私の記憶では、導入当初「ひとまず登録だけ。そのうち画像OKにするかも」
みたいな話だった気がするのですが、どうなっていますか? と。

答えは「提供停止。リリース予定は未定」とのこと。
http://img.p.booklog.jp/366021945c4d5438dc693597166523_l.jpg

( ˘ω˘ ) .。oO(チェッꐦ)ww

そんなワケで、
自分の本棚では画像が出ないアイテムは後ろ(というか下方)に回す主義なので、
私家版はずーっと潜った先にひっそり埋もれています(笑)。

> 価値観の問題

まさにそうですね、おっしゃるとおり!
私も「物語そのものに関心があって、本はそれに相応しい体裁であってくれれば」
と思うタイプで、読書にコスパを求めていません。
だから、何か違うんだなぁ……と思うことだらけです(ブクログに限らず)。

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